第2話
この世界は欲で溢れている。
性欲、強欲、数えきれない程の欲が渦巻いて
私は今にも窒息しそうだ。
あれはそう私がまだ幼かったころ。
両親は海外で仕事をしていて、祖父母と暮らしていた時期があった。
祖父母は私をとても大切にしてくれた。
毎日美味しいご飯を作ってくれて
笑顔の耐えない日々だった。
そんななんでもないある日のことだった。
当時、14歳だった私に祖父母が私に家庭教師をつけたのだった。
両親のように有望な仕事につけるよう家庭教師くらいつけたほうがいいと。
祖父母の言うことだ。
私は祖父母の期待に。ここまで育ててくれた祖父母の期待に応えたい。
そんな純真な気持ちで勉学に励もうと試みたのだった。
家庭教師が初めて家に来る当日、私はなんとなく部屋を片付けていた。
人が家に来るのだから、一応とこれくらいはしておかないとと言う気持ちがあった。
白と黒を基調にした部屋は女の子の部屋にしてはシックで落ち着いた部屋に見えるだろう。
部屋の掃除を終えて、紅茶を飲んでいると、インターホンが鳴った。
私は特に緊張することもなく、玄関の扉をあけた。
そこには身長175あるかないかくらいで、細身で髪の毛は男の人にしてはロン毛まではとは言わないが少し長い黒髪。いかにも勉強ができそうな出で立ちのメガネをかけた、目がキリッとしていてなんとなくキツネに似たような男が立っていた。
『こんにちわ。はじめまして、今日から楓さんの家庭教師を勤めさせていただきます、井上です。よろしくお願いします。』
井上というのか。このキツネ男は。
『はじめまして。私が楓です。こちらこそよろしくお願いします。』
井上は柔和な笑顔でペコリと頭をさげた。
私は早速、一軒家である、2階の自分の部屋に案内をした。
『どうぞかけてください。』
低いガラスのテーブルの前にクッションが2つ。
そこへ促した。
『どうもありがとう。』
また井上は柔和な笑顔で微笑んだ。
見た目とは少しギャップのある物腰柔らかな話し方。
隣通しに座って勉強がはじまる。
時たま、井上はペンを口元に持っていきながら首をかしげ、どうやったら私に理解させられるかを考えながら教えている。
井上の教え方は丁寧でとてもわかりやすいものだった。
すらすらと頭のなかで理解することができた。
『ここは……こうで、ここの方程式を……おっと。もうこんな時間だね。』
井上は左手につけた腕時計を見てそう言った。
私も壁に掛けてある時計に目をやると21時を過ぎようとしていた。
『そうですね。ありがとうございました。また明日もですね?』
私は机の教科書をまとめながら聞いた。
『そうだよ。頑張ろうね。楓ちゃん』
井上はまた柔らかそうな笑顔でにっこりと笑った。
『はい、井上先生。お願いします』
楓もまた微笑むように笑い頭をさげた。
井上が帰るとすぐに祖父母が様子を見に来た。
『どうだったかねぇー??』
『だいじょうぶだったかぁ??』
などと楓に声をかけた。
『おじいちゃん!おばあちゃん!大丈夫だよ!
すごく優しい先生だし、わかりやすいよ!』
祖父母は胸を撫で下ろしたかのようにホッとした様子で続けた。
『よかった。よかったぁ。じゃあこれからも頑張るんだよー』
『うんっ!!がんばるね!』
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