ビー玉少女
くらげちゃん
第1話
この世界。
生きることが大切だとか。
未来はきっと素晴らしいものだとか。
そんな綺麗事いらないんだよ。
だってちゃんと見て?
こんなにも世界は汚いじゃない。
汚物を撒き散らしたかのような世界じゃない。
私は綺麗なものすらわからなくなった。
全てが汚れてみえるの。
時は2015年。季節は夏。
カーテンからうっすらと日差しがさす。
嫌だな、と少女はタオルケットを顔に押し当てた。
朝がきてしまった現実がとてつもなく憂鬱にさせる。
ずっと夜ならいいのに…そんな事を毎日の日課のように思ってしまっている。
はぁ…、いつも通り重いため息をつきながら、ベッドの上でワイシャツに腕をとおす。
両親は海外でビジネスをしてるらしい。
少女にとって寂しいとかそんな感情は母親のお腹の中に忘れてきたようだ。
ようやく立ち上がりキッチンで自分でコーンスープを入れて、トーストをトースターにポイっと投げ入れた。
トーストが焼けるまでスープをすすり飲む。
このコーンのつぶつぶが好きだ。
つぶつぶのないコーンスープなんて認めない。
口のなかでコーンがしゃきしゃきする感覚。
私は食べ物をちゃんと食べている、そんな感覚になるのだ。
私は人間だ。その確認でもある。
そんなことをぼんやりと考えているとトースターがチンっという音を立てて焼けたこと知らせる。
少女はお皿にトーストをのせ、ブルーベリージャムをさらにのせた。
毎日の朝ごはん、極力なにも考えたくないのだ、
今日はあれにしよう、とか今日はもっと凝ったもの作ろうとか、思考の無駄遣い。
疲れるだけ。
栄養さえ取れればいいのだから。
少女はゆっくり朝食をとり終え、制服に着替えた。
短すぎないスカートにブレザーの制服。
腰まである長い黒髪を丁寧にブラッシングをする。
『もうそろそろかな』
と呟いた瞬間、ピンポーンと玄関のチャイムがなる。
少女はスクールバックを肩にかけて玄関をあけた。
その途端
『楓おっはよ!!!ねぇーねぇー寝坊しちゃってさ!!りんごもってきたよ!丸かじりしながら登校しよーかなって!』
少女の名は楓という。
『寝癖くらいなおしたら?ルカ。』
ルカと呼ばれたその女の子。この楓と真逆な性格でボーイッシュな髪。
笑ってる姿はどこか、ハムスターのような。
ルカは少しいじけながら続ける。
『いいじゃん!!どうせ、イケメンがいる学校じゃないし!!』
ルカらしいな。
楓はふっと笑って
『そうね』
とだけ答えた。
もうこの時、すでに疲れている。
友人関係。めんどくさい。
出来ることなら一人のほうがいい。
そんなことを露知らずルカは歩きながら話続けた。
最近、美味しいタピオカ屋さんが出来たとか
今度、服を見に行こうだとか
楓はそれに対してうんうんと相づちをうつことしかしなかった。
当のルカは全く気にしない様子で学校に着くまでの間話続けていた。
学校の校門にはいると、青々とした木々が風に揺れていた。
楓は、この学校では少し有名人。
容姿端麗、頭脳明晰。
共学でもあるせいか、男子からの熱い視線を嫌でも感じてしまう。
『わっ!楓先輩だぁ』
『ほんときれいだよねぇ』
『彼氏とかいないのかな?』
『お前はやく告れよ』
『はぁ?俺いくつ心臓あっても足らねぇよ』
こんなふうに噂されても、なにも感じない。
だって、見た目だけじゃない。
綺麗で頭よければそれでいい連中なんて眼中にないわ。
毎日、毎日、黒板を見て机に向かい、これって将来本当に意味があるものなのかしら。
だって私は…
汚い。
教えてあげる。
私がどれだけ汚いか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます