第1話 初の狩り
アメール
レベル:1
武器:畑の
お金カツカツ生活から脱出する為に、狩人となってお金を稼ぐ事に決めた。しかし、装備は布で作った薄い生地の服と膝丈のズボン。戦闘経験は無いに等しい。
「さて、先ずは村周囲にいる魔物狩りだぁ!」
狩りに出たアメールの前に最初に出たのは緑色で粘液状のスライムだった。
「魔物出たな! でりゃあ!」
アメールは魔物に出会うと、間を開けずに鍬を両手で持ち、思いっきり上からスライムに向けて振り下ろす。
しかしスライムは、振り下ろされた鍬に吸い付き、しがみ付く様にべっとりとくっ付く。
それに慌てたアメールはブンブンと鍬を振り回す。
「あわわわわ! 離れろ離れろ! 離れろよおおおお!!」
アメールが振りまわす鍬の遠心力に耐えられなくなったスライムはそのまま振り落とされ直後、振りまわす鍬に真っ二つに切り裂かれた。
─────────────────
レベルアップ!
アメール
レベル:2
武器:畑の鍬
初めての魔物の狩りで若干興奮気味。
「よっしゃああっ!! さてさて、確か魔物の中に核があるんだよな……?」
アメールは魔物の核に初対面で少しワクワクしながらスライムの死骸に手を突っ込んで核を探す。すると中から出てきた物は……恐らくついさっき生きていた時はしっかりとした形に成形されていたであろう、今はバラバラに砕けた核を見つけた。
しかし、それをみたアメールを何の疑いも無く喜びに飛び跳ね、期待と感動に瞳を輝かせる。
「これを売れば……ククク……」
それから村の近くに居る魔物を凶暴そうな魔物は除いてスライムだけを狩りまくり、手の中には大量のスライムの核を。途中で藁でカゴを作り、大量の核を手に入れた。
ただ、せっかく手に入れた綺麗な状態の核もカゴに入れるとかさむので、一々砕いてカゴに入れていた。
「ヘッヘッヘ……これで一攫千金……よっしゃああ! 王国に行くぞぉ!」
─────────────────
レベルアップ!
アメール
レベル:5
武器:畑の鍬
装備:藁のカゴ
これから丁寧に砕いたスライムの核を王国に売りに行く。これできっとカツカツ生活は卒業出来るだろうとスキップしながら王国へ向かう。
王国──────
うきうきしながら王国へ到着。王国は高い石の壁で囲まれた中に街があり、王城がある。その高い壁の外、大門では日夜、商人や立ち入りの冒険者から兵士まで検問し、厳しく取り締まる。
アメールにとってはごく普通の光景。別に悪い事はしていないし、すんなり通れるだろうとアメールは思った。
そしてアメールは門番に前に立ち、検問を受ける。
「はい次。えーっと……君は何の目的で此処に?」
「俺はゼア村から来た。今日から狩人だぜ!」
はっきり狩人だと答えるアメールに門番は一瞬驚くも、何かを悟ったかのようにため息をつく。
因みにゼア村とは、アメールがさっきまでカツカツ生活をしていた村の事である。
「はぁ……なんだ? 最近、早く死にたい人が多いのか? 狩人ってのはな……」
アメールはきっと門番がするであろう長ったらしい説教を察し、門番の言葉を遮って説明する。
「あー、危険だけど、稼げる! だろ?」
「いや、あのなぁ……まぁ、良いや……。ただ一つだけ警告しておこう。最近、『狩人狩り』という輩もいる。つまり、お前みたいな生半な覚悟で狩人になった奴を殺す輩だ。せいぜい明日になったらお前の死体を見つけるなんて事は止めてくれよ?」
あからさまに心配した表情で門番に見つめられるアメールはすこし戸惑いながら、王国に来た目的を伝える。
「お、おう……(;´・ω・`)分かった。で、今背中に見えるコレ、何か分かるか?」
アメールは門番にえっへんとした顔で背中に背負うカゴを見せる。
その綺麗に粉状にまで砕けたスライムの核が背負いカゴの中いっぱいに。バラバラに砕けたスライムの核が光を乱反射し、まるでカゴいっぱいに入ったエメラルドだと思わせるような輝きを放つ内容に門番は、凄いものを見たさに驚愕……ではなく、余りの勿体なさに膝を崩しながら驚愕した。
「君……いや、もう良いよ。通ってよし……」
アメールは門番の言葉に喜び、すぐに入ってすぐ見つけた案内図をみて素材屋へ向かった。
素材屋─────────
素材屋に入ると、20代くらいの若い男性がアメールをカウンター越しで迎えた。
「いらっしゃいませー」
アメールはこの大量のスライムの核が幾らになるのかと、鼻息を漏らし、大きな背負いカゴをカウンターに乗せた。
「これ、全部でいくら!?」
素材屋のお兄さんはその内容に、部屋全体に響く程に大笑いした。
「あはははは!! まさか! こんなに大量に!? もしかして狩人初心者かな?」
その大笑いにアメールは何故だか馬鹿にされたような気がして、少し口調が強くなる。
「な、何だよ……」
素材屋のお兄さんは、「ごめんごめん」と笑うのを必死に抑えながら、暫くして落ち着いてからアメールに全部で合計の売価を言い渡した。
「全部で……200コルトくらいかな……?」
「え……たったそんだけ? 畑の手伝いをした時の月給より安いじゃねぇかぁああ!!?? 狩人は金が稼げるって話は嘘だったのか?」
膝をガクリと突いて俯くアメールに素材屋は、少し困った表情で、その理由を話す。
「いやぁ、兄さん。魔物の核ってのは壊しちゃいけないんだ。魔物の核自体は戦闘に置いて核を傷付けてしまうから綺麗な状態で取り出すのは難しいから高く売れるんだ。でも兄さんの場合は、これだけあるスライムの核を全部砕いちまった。つまり売価は0に等しいという事だ」
「はぁ〜……だから門番も俺のカゴを見て、呆れていたのかぁ……」
「ははは……良かったらこれ全部、ポーションに加工してやろうか? ポーションはスライムの体液で作れるからな」
「あぁ……頼む……」
そうして素材屋はアメールのカゴいっぱいに入るスライムの核だった体液だけを取り出し、瓶詰めにしてポーションに加工した。
アメールの現在の所持金はお手伝いで稼いだ小遣い程度の金とスライムの砕けた核を売却した時に得た200コルト。アメールはたったこれだけでは今後の生活もままならないと思い、狩りを始めたばかりとしては多すぎるポーションを売る事にした。その数100本。
「じゃあ、ポーションを80個売る。こんなにいらねぇよ……はぁ……」
「あいよ。まぁ、今度は失敗しないようにな。本来なら80個で4000コルトだが、おまけで5000コルトにしてやるよ。ちょっとは生活の足しになるだろ?」
アメールはプラスで1000コルトおまけしてくれた事に深く溜息を吐きながら申し訳無さに何度も謝りながら金を受け取る。
「すまねぇ、すまねぇ。一攫千金できると意気込んでたばかりに……こんな大損をしちまうなんて……」
「良いんだよ。まぁ、今回の量にはびっくりしたが、よく有る事だ」
そうしてアメールのテンションは最低に。下を向きながら素材屋を後にする。大きすぎる損にアメールは今日までの努力がパァになった事に精神的にどっと疲れ、まだ時間は真昼だが、宿屋へ真っ直ぐ向かった。
レベル1から始まる男の冒険譚 Leiren Storathijs @LeirenStorathijs
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