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 最近、俺の周りでリストラされる人が多くなってきている気がする。ついこの間も昔から付き合っている親友がリストラされたと聞いた。

 それに対して俺の仕事は安定している。職場で今までリストラにあったという人は聞いたことがない。リストラという話は自分とは関係のない、別の世界で起こっていることのように思えた。

 しかし、いつまでもそう思ってもいられなかった。

 一週間前、ついに俺の会社でも肩たたきが行われた。うちの会社での第一被害者は俺だった。

 それはあまりにもショックが大きく、ずっと部屋にこもって塞ぎこんでいた。時々彼女が部屋に来て、俺を慰めていってくれた。こんな状況に陥っても見捨てずにいてくれた彼女の想いに感謝して、涙を流した。

 俺は部屋にこもってパソコンをいじっていると、とあるホームページに目を止めた。

 ネットアイドルのホームページだ。そこには彼女のプロフィールや写真などが貼られていた。俺が目を止めたのはそれらと一緒に掲載されていた彼女の使っている通学路。

 時間がない。それを見て俺は決心した。

 俺は急いで電話をかけた。相手は先日リストラされた親友だ。まだ朝早かったので、相手は眠そうな声で電話に出た。

「なんだ原田か。どうしたんだ?」

「西口、お前、金に困ってるよな?」

 電話の向こうの西口が少しの間、沈黙した。

「どうしたんだ?いきなり」

「いい仕事がある。今すぐうちに来てくれ」

 そう言って電話を切った。俺はまたパソコンの画面を見た。

 しばらくして西口が訪ねてきた。俺は彼を部屋に入れて、手早く説明した。すると彼の目が思いきり見開かれた。

「誘拐……? お前、本気で言ってるのか?」

 そう、俺が考えたのはネット上の彼女の誘拐だった。

「見ろ。ここに通学路が載ってる。そしてこっちにはご丁寧に父親の年収まで書いてある。この額なら身代金も期待できる」

 俺はマウスを動かしながら西口に説明した。しかし西口は不安そうな表情を浮かべている。

「でもよ原田。これ、何ていうか…」

 彼は口を止めた。じれったくなって、「なんだよ」と言って、彼に先を促した。

「なんだか…これ…、まるで『私を誘拐してください』って言ってるみたいじゃないか?」

 確かに、そう言われてみればそう感じることができる。

 しかし、だからといってこのチャンスを逃すわけにはいかない。俺達は犯行を決意した。

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