第11話 髪が長い理由

「そんで俺たちに那月が深窓の令嬢だと言わないようにとそういう事か?」

「はい。」


現在、相田 那月ことボクはリビングで幼馴染達に向かって土下座をしていた。ちなみにカレンさんはあの後家に帰り、卯月は泊まりに行った。


「どうせ学校に通ったらすぐに分かると思うんだけど?」

「那月も往生際が悪いぞ?」

「なっちゃんもそろそろ自分が美人だって自覚もとうよ。」


散々な言われようだ。我が幼馴染達には友情という文字はないのだろうか?


「どうしてそんな知られたくないんだ?」

「そりゃ男なのに令嬢って言われることや幼馴染以外で面と言われるとね・・・」

「なら髪切れよ。そうすりゃ男っぽくなるぞ。」

「嫌だよ。短髪なんかにしたら部屋にこもるよ。」

「お前のその短髪嫌いなんなんだよ・・・」

「そりゃ短髪にすれば男っぽく見えるけど小学校の時に言われたからさ・・・」

「あぁ・・・」

「何それ私知らないんだけど?」

「私もー。」


そりゃ知らないと思う。当時は拓馬に泣きつき慰めてもらいその時に髪を長くしようと決めたのだ。


「昔、那月が男子にイジメられてた時になちょっとあってよ。」

「ふーん。」

「千夏は気にならんのか?」

「言わないってことは言いたくないんでしょ?」

「まぁ・・・」


別に幼馴染達には言ってもいいんだけどこの話には続きがある、それがいいたくないのだ。

イジメてきた男子は拓馬に殴られて謝ってきた、その時に理由を聞いたのだがイジメたのはボクが好きだったらしい。ボクが短髪だと男だと思われるから、女の子みたいに髪を伸ばさせたかったらしい。

だがボクは男だ。だから男だと言ったらその男の子は愕然としていた、それはもうこの世の終わりみたいに。

以降イジメは無くなったがその男の子が涙を流しながら髪を伸ばしてくれと言ってきて可哀想だったので伸ばしているのだ。


「それならとりあえず黙っとくよ。」

「ありがとう。」


それから幼馴染達に料理や買い出しを手伝ってもらった。

面白いことにこの時の役割分担は買い出し組は千夏に愛香姉、料理組はボクと拓馬だ。千夏と愛香姉はボクや拓馬と比べたら料理は得意ではないといい買い出しに行った。


「まぁ、那月は料理はプロ級、俺にも菓子だけなら同レベルだから2人とも気を使ったんだろ。カレンさんだっけ?に美味いもの食べさせたいだろうし。」

「けど片方行けば良かったんじゃないかな。女の子だけだと心配じゃない?」

「2人とも那月よりは強いよ。」


実際那月は知らないだろうが千夏は空手の有段者であり、愛香は合気道を習っていた為に2人の方が那月より強いどころか拓馬より強かったりする。


「それにしても那月は料理うまいよな。誰から習ったんだ?」

「独学だよ。卯月もお母さんも得意じゃないからずっとやってたらこうなっただけ。」

「あー確かに卯月の飯はな・・・」


あれは得意とか下手とかそんなのではと拓馬が呟くがボクだって昔は似たようなものだった。


「そんで今回は何作るんだ?」

「6種の1口ケーキ」

「それはまた面倒な。」

「できなくはないでしょ?」

「まぁ生地は一緒だとしてすればなんとか。」

「カレンさんケーキ好きらしくてさ。鉄華にも行ってるんだけどあんまり買えないらしいよ。」

「なら那月がもっと頑張ってくれ。」



そうやって軽口を叩きながら拓馬と一緒にデザート作りをしていく。拓馬と一緒なので意外と生地の準備は早く終わったので2人してコーヒーを入れて飲み始めた頃に千夏と愛香姉も帰ってきた。


「那月達は終わったの?」

「うん、こっちは下準備は終わったよ。そっちはどうだった?」

「ちゃんと欲しいもの買えたよ。」

「じゃあ少しだけ休もうか。」


冷蔵庫に向かいサクランボのタルトと紅茶を出す。


「これが噂の那月の新作?」

「そうそう、うちの親父がべた褒めしたやつ。」

「うちにも数量限定でおろしてくれるんだよね。ありがとうね拓馬。」

「親に伝えとくよ。」


みんなも食べると気に入ってくれたらしく喜んでくれた。こうして喜んでくれるのを見ると嬉しい。


そうやって久しぶりに幼馴染4人でゆっくりと過ごしていた。

なんだかんだ言ってもみんなといると気楽だし何より楽しいのでまたこうゆうパーティーもいいかなと思えるのだった。

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ボクは男だよ!? 白詐欺 @sirosagi

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