第4話 バレンタイン手渡しイベント②
ボクは今乾いた笑いをしているだろう。今ボクの目の前には「ようこそなっちゃん!」と書かれた横断幕と一緒に200人ほどの人達が手を振っていた。
母から準備が出来ているからと部屋に入ったらみんな大騒ぎになった。よく見ると千夏もいるのは何故なのだろうか。
(とりあえずさっさと壇上に行こう・・・)
手を小さく振りつつ微笑みながら歩く。たぶん近くで見たらきっと引き攣っているいるだろう。
そうして壇上に用意された椅子に座るとイベントが始まった。
『みんなお疲れ様です』
「「「「「お疲れ様です!」」」」」
『いよいよみんなが待っていたバレンタインのイベントを始めるけどみんなはどう?』
「ありがとうございます社長!」
「ずっとついて行きます!」
「みんなに自慢できます!」
『喜んでもらえたのなら嬉しいわ。それでは今から呼ばれた人から壇上に上がってね。』
そうして始まったバレンタイン手渡しイベントはアイドルの握手会みたいなことになっていた。
呼ばれた人が壇上に上がりチョコを手渡して一言二言話すのだがみんなずっと話そうとするので横にいる母が用意した警備の方が1人30秒程で引き剥がすということになった。
さらには手渡しで渡している時に連絡先を聞こうとした方や結婚を申し込みもされたが丁重に断った。
「いやぁ凄かったわね那月。」
「そうだね・・・まさか結婚の申し込みまでされるとは・・・ボク男なんだけどなぁ。」
「いまの那月は傍から見たらお姉さんに見えるけど中身は立派な男(の娘)よ。」
何とか社員の手渡しを終えて昼食を取っていた。スケジュールとしては手渡しが終わったあとパーティーの会食に出ようとしたのだが、あまりにも疲れたため社長室のソファに倒れていた。
「あと1時間したらモデルの子に渡すんだかられまでには元気になるのよ?」
「んー分かったー。」
母はそう言って社長室を出ていった。
ボクも正直疲れているけどあそこまで楽しみにしてくれているなら頑張ろうとは思う。
その後疲れているためアラームをつけてうたた寝するのだった。
『それじゃあ午後の部を始めるわね。と言っても午後はモデルの子達に渡すからみんなは暇になるかもだけどね。』
そんな挨拶から午後の部は始まった。モデルの人達はみんなが個性豊かで誰もが可愛かったり綺麗だったりした。
ただ何故か数人ほど握った手をにぎにぎしたり涎を垂らしそうになっていたがこの会社の人達はみんな個性豊かすぎではなかろうか。
「ありがとうねなっちゃん。これ手作りでしょ?」
「えぇ、手作りですよ。簡単なものなので恐縮ですが。」
「いやいや、あのなっちゃんの手作りでしかも手渡しで貰えるなんて自慢もんだよ。」
「そう言って貰えると嬉しいですね。」
にへらっと頬が緩んでしまう。やっぱり喜んで貰えるのは嬉しい。
「それでなんだけどなっちゃんが手渡してるとこ写真で撮っちゃダメかな?」
「写真ですか?」
母を見ると親指を立てて満面の笑みをしている。これは撮ってもいいということだろう。
「大丈夫そうなんで撮りましょうか。」
そうして写真を撮ったら他のモデルの人達も撮りたいと言われたので撮ったのだがみんなツーショットを希望していたので時間がかかった。
その後このイベントの目玉企画が始まった。
それは今日1番の騒ぎになるほどに。
『それじゃあ今からモデルの子に渡したなっちゃんの手作りチョコ10個を景品にしたビンゴ大会を始めるわ。』
「「「「Fooooooo!!!!」」」」
『手作りチョコが欲しいかー!』
「「「「「欲しいぃぃぃぃぃぃ!」」」」」
『隠し撮りブロマイドが欲しいかー!』
「「「「「欲しいぃぃぃぃぃぃ!」」」」」
「えっ、いつの間に撮っていたの!?」
『手作りしている動画が欲しいかー!』
「「「「「ほじぃぃぃぃぃぃぃ!」」」」」
『では始めるわよ、泣いても10人だけだからね。』
「「「「「Yeah!」」」」」」
どうしてみんな男の隠し撮りにそこまで熱くなれるのだろうか。というかいつ撮られていたのか。
「那月くんこれがそのブロマイドです。」
そう言って東雲さんがコソッとブロマイドを渡してくれたが、そこにはチョコを湯煎する時に指を火傷して指を舐めている所だった。
撮影者は卯月しかいないだろう。
そうしてビンゴ大会は阿鼻叫喚に包まれた。当たった人は泣いて喜び狂喜乱舞し、外れた人は崩れ落ちこの世の終わりみたいになっていた。モデルの人も似たようになっていたあたりやはりこの会社は個性豊かなメンバーが集まっている。
『いやーまさかここまで好評だとは思わなかったわ。だからまた夏にもなにかやろうと思うのだけどみんなはどう?』
「是非やりましょう!」
「みんな明日から作業を1.5倍早く進めるぞ!」
「売り上げ伸ばしてなっちゃんに褒めてもらうんだ!」
みんなそこまでしてやりたいのだろうか・・・明らかに目がイってる人もいる。
『それじゃあ業績が良ければやるわね、みんな今日はお疲れ様!』
「お疲れ様でした。」
「「「「「お疲れ様でした!」」」」」」」」」
そうしてバレンタインイベントは終わった。ただ帰りも横断幕を広げてみんな手を振っていてボクはこうゆうのも悪くないなと思った。
その後、愛香姉とその両親と東雲さんと千夏にチョコブラウニーを渡したがみんな喜んでくれて今年のバレンタインは笑顔のまま終わったのであった。
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