第3話 バレンタイン手渡しイベント①

1月末とある雑誌が巷で騒がれていた。それにはアイドル卯月がモデルとして載っていたがその他に1人の綺麗な笑顔をしたが載っていた。

雑誌を買った人達はみなその女性を見て一様に見惚れていた。それが噂となりその雑誌は過去最多の売上を記録して会社の社長は笑っていたとか。


「いやぁ那月のおかげでみんなに特別賞与出せるわ。」

「そう・・・それは良かったね・・・」


2月の初旬、自由登校になった為に朝から母と一緒にPearl Boxにきていた。

ボクといえばこの前のが掲載されている雑誌を見せてもらい撮られた姿をみて恥ずかしくなり、更にはその雑誌がかなりの売上になったらしくボクの恥ずかしい姿を見られたと思い悶絶してた。


「それで今度は何で呼ばれたの?」

「そろそろバレンタインじゃない?」

「そう言えばあと1週間くらいだね。」

「今年は誰かにあげる予定はないわよね?」

「まぁ友達も会うことないしね。」


中学生になってから毎年バレンタインには男子に泣きつかれてバレンタインにチョコを用意していた。

何故かその時に女子と一緒に作ったあげく女子の分も用意させられたのだが。

だがそれを聞くということは、


「もしかしてバレンタインチョコを作れとか言わないよね?」

。」

「えっ、他にも何かあるの?」

「えぇあるわ。それはね・・・」


そう言って母は立ち上がり会議室の電気を消した。

そしていきなりスクリーンにデカデカとその文字が映し出された。


「バレンタイン手渡しキャンペーンよ!」


そう、後ろにチョコを渡している女の子と受け取っている男の子の絵の上にデカデカとバレンタイン手渡しキャンペーンと書かれていた。

そこからはいつの間にかいた東雲さんから説明があった。

なんでもこの前の雑誌から社員のみなさんからもう一度会いたいという言葉があったらしい。それに対し母はボクが毎年バレンタインに男子にチョコを用意していたのを思い出し、いっその事ボクが手渡しをするイベントにしちゃおうってことらしい。


「手渡しや用意するのはいいんだけどなんでイベントに?」

「ほらみんな頑張ってもらっているからたまには労いをね。」

「労いになるの?」

「なるわよ!」


ダンっと机を叩き叫ぶ我が母。だがボクは男だから渡されても女の人はまだしも男の人は嬉しくないんじゃないかな。


「那月もしかして「ボクは男だし男の人は嬉しくないんじゃないかな?」とか思っているわね?」


ズバリと言い当てられて肩がビクッとなった。なんでボクの思考が読めたんだろ。


「那月の考えなんて分かるわよ。言ったでしょ、社員から会いたいって言われたって。みんな那月に会いたいって言ってるのだから、そんな那月が手渡しで喜ばないはずがないでしょ。ねぇ、紗夜?」

「そうですね。私としても那月くんから貰えるなら嬉しいですよ。それに千夏ちかも毎年喜んでましたし。」


東雲さんの言う千夏とは東雲さんの娘でボクと卯月の同級生であり幼馴染みである。


「そうゆうわけだから那月にはまたあの格好でチョコの手渡しをしてもらいたいの。」

「うーん、諦めて手渡しするのはいいけどさすがに全員分のチョコは作れないよ?」

「そこは大丈夫よ、こちらで用意するから。ただこちらでモデルをやっている子達・・・そうね20人程って作れる?」


20人分かぁ・・・一応学校も休みだし問題はないかな?


「1日貰えれば大丈夫だと思うよ。」

「なら材料はこちらで用意しておくわね。」


そう言ってこの日は解散になった。

それから6日後の2月13日、我が家は甘い匂いに包まれていた。

母が用意してくれたハート型の入れ物にトリュフチョコを5つ入れてラッピングをする。

朝の9時から作り続けて今はもう夕方の18時だ。20個の手渡し用のチョコに7つのチョコブラウニーを作ればそりゃこの時間にもなるだろう。

今年は父が出張から帰ってこないのと1が旅行から戻ってきてないのでいつもより少ないとは言え疲れた。


そうしてできた物を冷蔵庫に入れていく。毎年この時ほどうちの冷蔵庫がでかいのを喜ぶことはない。

卯月に関してはアイドルということありバレンタインチョコは作らないらしいのだが、ファンの人達ようにバレンタインにちなんだコーデのブロマイドにサインをしたのを配るため今年は泣きながら頑張っていた。


そうして準備をして2月14日を迎えた。

朝からパッドブラをして撮影していた時と似た服装をし髪型はハーフアップにした。

母の車に乗り込みチョコも保冷剤の入ったクーラーボックスに入れて持っていく。


この時のボクはこの後の手渡しイベントでてんやわんやすることになるのだがそんなことなど露知らずのほほんとPearl Boxに向かうのであった。

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