第2話 This is パッド入りブラ
昼も食べ終わり逃げ出そうとしたものの憐れな牛の如くドナドナされた。
「お母さん本当に撮るの?」
「当たり前でしょ。那月も卯月と似てるんだからモデルにピッタリでしょ?」
「ボク男なんだけど!?」
「どうせ服を着ればそんな些細なこと気にならないわよ。」
「全然些細じゃないよ!?」
「それにちょうどいい物を作ったのよ。」
そう言って母が取り出したのはブラジャーだった。
「なにそれ?」
「ブラジャーよ。」
「見たら分かるよ。ただなんでそれ用意したの?ボク胸ないよ。」
「これはねブラジャーの裏側ににパッドが入っているのよ。さらに新技術で限りなく胸の柔らかさに近づけたから上から触っても誰も気づかないわ。」
ブラジャーの胸の部分を触りながら説明をする母は正直いってイカれていると思う。
「まぁこれも着けてメイクすれば問題ないでしょ。もともと素顔でも問題ないけど念には念をね?」
「なら最初から撮るのやめようよ!」
そうしてメイク室にぶち込まれて30分後、部屋の前に待機していた東雲さんと社長室に向かった。
「お母さんこんな感じで大丈夫?」
「全然OKよ、むしろ予想以上って感じ。そうよね紗夜?」
「そうですね・・・正直予想以上でしたね。元々似ているとは言えまさかメイク1つでここまで変わるとは・・・」
あぁ、東雲さんと合流した時驚いた顔をしていたのはそのせいか。
もともと髪はシュシュで束ねて肩から前に流していて、服装もズボン以外は体の体型が出ないゆったりしたパーカーだった。
それを少し薄くメイクして服をフレアスカートにニットのセーターにしたらおっとりした目に長い髪を束ねた優しいお姉さんの完成だ。
「ブラジャーもちゃんと着けてるわね。」
そう言ってボクが着けているブラジャーを揉みしだく母。絵面が酷い。
「ま、それじゃ撮影するからさっさとスタジオ入るわよ。」
「はぁ・・・わかった。」
もうここまで来たらやけだ。そうして撮影スタジオに向かうまで社員さんの視線が突き刺さった。
(あんな子会社にいたかしら?)
(社長が女優でも連れてきたんじゃないのか?)
(めちゃくちゃ綺麗な女の人だな。)
(彼氏とかいるのか?)
(めちゃくちゃ噂されてる・・・)
ほぼ全員の視線を浴びてようやく撮影スタジオに入った。
「いやーやっぱり那月はモデルになると思ったのよ。」
「そうですね。那月くんはもともと綺麗でしたし今なら女の子って言われても違和感ないですね。」
母と東雲さんが絶賛するがボクとしては悲しいよ・・・
そうして撮影スペースに向かって行くと数人のスタッフがいたので挨拶をした。
余談だがその時にっこりと微笑んで挨拶をした那月に男性陣が惚れたことが、ファンクラブを作るきっかけとなったのは那月は知る由もなかった。
「それじゃ撮影するわよ。
「はーい了解。」
そう言って牧田さんと呼ばれた女性が写真を撮り始めた。
ボクといえば撮影中は椅子に座って本を読んでいるだけでいいという事だったので意外にも楽だった。
「はい、もう大丈夫だよありがとうね。」
「いえ、こちらこそありがとうございました。」
「いやー那月よかったわよ。」
「あたしも思わず見惚れちゃったもん。」
「見惚れた?」
なんか見惚れるような所あっただろうか?ただ本を読んでいただけなんだけど。
まぁ読んだ本が面白くてクスリとわらってしまったがそんな所は撮られてないだろう。
そうして撮影も終わり今日はもうお終いということで母と卯月と一緒に馴染みの喫茶店に向かった。
「いらっしゃいませー。って、あらなっちゃんとうーちゃんに月夜さんいらっしゃい。」
「お邪魔します。」
喫茶店「まなか」、そして挨拶をしてくれ人がボクと卯月の幼馴染みである1つ歳上のお姉さんの
ちなみに愛香姉はボクと卯月と中学が一緒で来年入学する高校も一緒だったりする。
「今日は何にしますか?」
「ボクはBLTサンドで。」
「私は期間限定のクリームパスタで。」
「あたしはチョコレートパフェで。」
「かしこまりました。」
そう言って愛香姉はオーダーを伝えにいった。
「愛香ちゃんも可愛くなったわねぇ。今度3人で撮影してみない?」
「ボクは嫌だよ。」
「えー、お兄ちゃんやろうよ。お金もらえるよ?」
「だけど愛香姉が嫌がるなら無理でしょ。」
「愛香さんならOKもらってるわよ。」
「嘘だっ!?」
「本当だよなっちゃん。」
料理を持ってきた愛香姉が会話に入ってきた。いつも思うがその細腕にどうしてそんなに物を持てるのだろうか。
「前々から頼まれててね、両親も承諾したからやってもいいよってね。それに高校生になってからもいろいろとお金かかるから丁度いいなって。」
胸に手をあてながら愛香姉は言うがもしかして金がかかるって胸のことなのかな?確かに夏に見た時よりも大きくなっているけど。
「まぁそんなわけだから春休みにも撮影するからね。」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その時喫茶店「まなか」で1人の叫び声が聞こえたが誰も気にする事はなかったらしい。
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