第7話
「……ん、おいしい」
「良かった。食事は何がいい?」
「お任せします」
「じゃ、和食にしよう。この
「ええ」
どんな言い訳をして柴田からの誘惑を断ろう……。純香は逃げ道を模索していた。だが、不覚にも柴田に勧められた二杯目のカクテルで、足を取られるまでに酔ってしまった。
酔いが
「寝てたの? 私」
「ああ。目が覚めた?」
振り返った柴田がベッドのそばに来た。
「ごめんなさい」
「いや、気にしなくていいよ。お腹は空いてない?」
「空いた」
「じゃ、行こう」
ベッドから降りた途端、よろけて倒れそうになった純香の体を柴田が支えた。
「大丈夫?」
「……ええ」
互いは見詰めあった。潤んだ純香の瞳が街灯に煌めいていた。そして、どちらからともなく唇を重ねた。逆光の中で絡み合う二つの影は、やがて、窓辺から消えた。――
――柴田との情交を後悔しながらも、柴田に惹かれている自分の気持ちを否定することはできなかった。……何が復讐よ。母の
「今度、娘のミオに会ってくれないか」
横で煙草をくゆらす柴田が顔を向けた。
「ミオちゃんて言うのね。どんな字を書くの?」
「美しいに
「綺麗な名前ね」
「来月から五年生だ。いろいろ教えてやってほしい」
「……私の面接の時、社長室をノックもしないで開けた若い女性とはどうなったの?」
「……別れた」
柴田は天井に顔を向けたままで返事をした。
……やっぱり、付き合ってたんだ。純香の直感は当たっていた。
「別れたから次は私ってわけ?」
「逆だ」
「えっ?」
柴田の横顔を視た。
「君の出現で別れたんだ」
「どう言うこと?」
「君と出会ってから、彼女とは会っていない。……それで気づいたんだろ、君が原因だと。向こうから聞いてきたから、俺も正直に言った。肯定した上で、別れてくれと」
「……」
「会社も辞めた。バイトの子が電話番と簡単な事務をしてるよ。君に頼むのは虫が良すぎるからな」
「……私のせいだったのね」
「責任なんか感じるなよ。俺が勝手にしたことだから」
柴田は背を向けると、煙草を消した。
「お腹、空いたろ? 今度こそホントに食べに行こう」
ボサボサ頭の柴田が少年のような表情をした。――
「……結婚したことは?」
猪口を手にした柴田が見た。
「ううん、ないわ」
理由は聞かないでよ、あなたが原因なんだから。純香は心で呟いた。
「君ほどの女が――」
柴田はそこまで言うと、口をつぐんだ。純香の醸し出す雰囲気がそうさせた。
「……女房は男を作って出ていった。俺が原因だ。仕事にかまけて、親の面倒も娘の面倒も任せっきりだった。家庭を顧みない亭主じゃ、嫌気が差すだろ」
自分の話に変えた柴田は
「……」
純香はお茶を飲みながら、握り寿司を食べていた。
「もう二度と同じことは繰り返さないよ」
柴田のその言い方は結婚を
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