【推理ラブレター】★♡


「ラブレターってさ、夜に書いて朝読むと、すごく恥ずかしくならないか?」

「ああ、それって夜になると、副交感神経が強くなるかららしいですよ」


 部長のいつもの唐突な話を、冷静に返して僕はインスタントコーヒーを淹れ始めた。文芸部の部室には僕と部長しか居ない。


「どうして、いきなりラブレターの話を?」

「実は今朝、下駄箱を開けたら、これが入っていて」


 部長は鞄の中から白い封筒を取り出した。


「え?まさかラブレターですか?部長に?」

「私の魅力に気づくとは、大した男だね」


 黒縁くろぶちのメガネを、クイッと上げて、部長は微笑みながら封筒から青い便箋びんせんを取り出した。


「多分、夜に書いて、朝起きて恥ずかしくなったんだろうね。一度消した後がある」


 部長の推理力は凄い。


「書いた人は左利きだね。文字が左方向に、少しだけ黒ずんでる。文字が小さい。これは、心理学的に言うと、恋愛に対して消極的な方だと言われている。それなのに、ラブレターとは古風な人だね」

「なんて書いてあるんですか?」

「内容はプライバシーに関わるから、言えないけど、明日の放課後、校舎裏に来て欲しいと書いてある」


 コーヒーに砂糖を入れて、グルグルと木製のマドラースプーンでかき混ぜながら、僕は尋ねた。


「部長は明日、校舎裏に行くんですか?」

「明日は部活動が休みだからね。行こうと思ってるよ」


 部長は便箋びんせんに目を通しながら、続けた。


「多分、手紙を出した人は部活をしていないか、文化系の部活に入っているね。運動部は明日も部活動が忙しいはずだし、放課後は暇じゃないだろう」


 僕は自分の心臓の音がうるさくて、この音が部長に聞こえてるんじゃないか?と考え始めた。


「ところで、君は最近眠れているかい?目の下のクマが酷いよ」

「最近、あまり眠れてないですね」


 眠気を覚ますために入れたコーヒーが、少し冷めてしまった。もうバレているんだろうな。と考えながら、僕は続ける。


「明日、校舎裏で待ってます」













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