第24話
彼らが見えなくなっても、小夜は立ったままずっと動こうとしなかった。
社の背後からがさがさと音がして、頭に葉と小枝の切れ端を付けた瀧とマルの二人が出てきた。二人はしばらく顔を見合わせていたが、やがて瀧が肩をすくめ、先に小夜の方へ歩いてきた。
その間にマルはお堂の前に回り込んだ。
「失礼します」
深々と頭を下げてから、御扉の隙間から中に手を差し込んだ。そこから小型の無線スピーカーをふたつ取り出してポケットに戻した。
機器の回収が終わり、マルも小夜の所へ戻ってきた。瀧は小夜の右隣にいたが声をかけられず、ただ立っているだけだった。確かに小夜の背中には誰も寄せつけない雰囲気が漂っていた。
意を決したマルが声をかけた。
「小夜、ごめん。僕の書いた神様の台詞が駄目だったみたいだ。それにボイスチェンジャーのアプリから出る声も、いまいち嘘っぽかった」
「いや、それは違う。小夜、悪いのは声優の俺だ。もっと上手に誉田の神さまを演じられていれば!」
瀧が本気で悔しそうに言い、声を詰まらせた。
二人の詫びの言葉が、どの程度小夜に届いたのかは分からなかった。
ただ小夜は森の一点を見つめ、返事を返さなかった。
その拳をずっと握りしめたままで。
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