第11話



「え! まだわからないのか。ロボットだよ! いま流行りのAIを搭載したフクロウ型ロボット! 皆の話を聞いたら目がバチッと光る。質問を聞き分けてバチバチっと返事するんだ。一家に一台置いて、神の言葉をもれなく伝える。これで誉田の問題はすべて解決! 名前は……そうだな『森っ子X』ってのは、どう?」


「あのさ、わたし一瞬、瀧が瀧らしくて良かったってホッとしちゃったじゃない! ねえ、馬鹿でしょ? 同好会レベルの私たちがそんな高性能なロボット、作れるわけないじゃない!」


 小夜には激しく否定されたが、瀧はまだくじけてはいなかった。「そっかなー。なあ、お前はどう思う? あれ、マル?」


 マルはひとり腕を組み、難しい顔をして唸っていた。「……ええと、音声認識ユニットは僕が昔作ったアレを使って……AIのラーニングはフリーのサービスを利用すればいいや。問題はハードの構成だよな。ああ、駄目だ。ちょっと考えるだけでも、電力が全然足りる気がしない」


 小夜が瀧を小突いた。「ほら、あの子真面目に考えちゃってるじゃない! 変な材料を与えてマルのスイッチを入れないでくれる?」


「何だよ。俺のまだ短い人生の中じゃ、最高のプレゼンをしたと思ったんだけど」


「ぷれ……って何? 私なにも貰ってないけど?」


「あの、小夜。『プレゼント』と勘違いしてない? 瀧の言ってるのは自分の言いたいことを主張するって意味で――」


「それ以上、言わない! し、知ってるから! 判ってることをわざわざ解説しないで!」


「はいはい、俺の番。えーと、採用されたら、発案者の俺が自らロボットの声を担当します! 『さあ、神の声を聞くがいい……』。どう? おれって結構、美声なんだぜ!」


「声だけは大きくていいかも」


 マルがぼそっと感想を言う。


「そうだろ? って、おい! だけ・・って何だよ!」


「そのままだよ。事実だし」


「い、言ったな、この回路オタク!」


 男子たちの言い合いが喧嘩に発展しそうになったその時、小夜の甲高い声が割って入った。「ちょ、ちょっと待って! 瀧、さっき『神の声』って言ったよね?」


「えーと、言ったっけ。あれ? もう忘れた」


「どうしたの、小夜?」


 瀧の返事もマルの質問も聞いていなかった。小夜の頭の中はいま、やりたい事と出来る事の二つを並べ、ひたすら実現への可能性を探る計算を繰り返していた。


 触れられない置物のようになった小夜の前で、喧嘩のタイミングを奪われた二人が困った顔をしていた。


「やっぱり小学生の時から変わってないんじゃない?」


「小夜の性格だろ? かもな。『思い詰めたら一直線』」


「うん、まだまだ甘い所あるけど、この手ならいけるかも! ねえ、二人ともここに座ってくれる? そう、前に来て。コホン。はい、これから私の『ぷれぜん』を始めます。最初にこの計画の主旨を説明するとね……」


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