第7話



「起きて!」


 靴下は履いているけれど尖ったつま先が、布団の上から瀧の脇腹を容赦なく蹴った。


「うお、何だ!」横を向いて寝ていた瀧の目が衝撃でバチンと開いた。


 すぐ隣にマルが見える。いっとき起きそうになった彼は、まだ大丈夫と判断したのか甘いうめき声を漏らして、再び眠りに落ちようとしていた。


 どうやら起こされたのは自分だけらしい。仰向けに戻って自分に覆いかぶさる影の正体を探る。そこには別室で寝ていたはずの小夜が仁王立ちになり、瀧が起きるのを待っていた。


「さっ、出かけるよ!」挨拶代わりに、にっと笑う小夜。


「マジで言ってんの。何時だと思ってるんだよ」


「マジおおマジ、ほら!」


 小夜が両手を広げて格好を見せた。頭から足元まで、すっかりトレッキング仕様の服装になっていた。


 小夜は寝ている瀧をジャンプで飛び越え、マルの布団にお尻から着地した。いくら小夜が小柄な女の子だといっても、衝撃は相当なもの。潰されたマルがうめき声をあげるのも無理もなかった。


 しかし小夜は悪びれる様子もなく、窓際のカーテンを開け放った。


「いい天気。さあ、時間がない。行くよ!」


「だから、どこへ?」


「うーん」


 首をかしげる瀧と、お腹を押さえたまま眩しそうに薄目を開けるマル。


「決まってるでしょ」微笑む小夜の顔に、昨日あった迷いの表情は微塵もなかった。


「出かけるぞ! 誉田の森へ!」


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