最後に愛が残った

人類の絶滅が使命の完全無欠なるコンピューターの使者。
人類最後の生き残りであり自由奔放な超能力者の少女、リンダ。

マリィと名付けられた機械の使者は次第にリンダの魅力に惹かれていき、いつしか自分の使命が揺らいでしまいます。

近年アンドロイドなどを扱ったフィクションの多くで「ロボットが人の感情に目覚める話」はありがちな定番ネタであるように思いますが、本作はその過程の描写がすごく丁寧で、特にリンゴを食べたマリィの反応はアダムとイブの禁断の果実を彷彿とさせるようで演出の粋さに脱帽しました。

二人の出会い、そしてその結末は単なる偶然なのか。あるいはそれすらも人類絶滅装置の計算なのか。

人類を理解し、滅びをもたらす為にもがく程膨れあがっていく人間らしい心に葛藤するマリィの心情を最後の一文まで途切れぬ美しさで表現される文章は必見です。