不治の病
「ふと思ったんだけどさ」
「なんですか?」
「虫歯ってどうしてこんなに痛いのかな」
「とっとと歯医者行ってください」
「鬼か君は」
「医者行かないと治んないんだからしょうがないでしょう」
「くっそー、なんでこんな痛いんだ虫歯……そもそもなんで虫歯って自然に治らないんだよ……人間の自然治癒能力はどうしたもっとがんばれよ」
「虫歯は完治しない病気の一つらしいですからね」
「え、不治の病なのあれ?」
「あくまで進行を止めてるだけだとか、いわゆる『元通りになる』という意味の完治はしないそうですよ、削ったり薬を塗るなりして進行を遅くしているだけだそうです」
「うっげー、虫歯如き自然に治せないとか人間も大したことないなー」
「あなたの主語はいつもデカい」
「そういえば、虫歯って遺伝するんだっけ? うちのお母さんも虫歯よくやってたって聞いたけど」
「遺伝するというか『子供の頃に親とキスする』となるとはよく聞きますね、親の口内にある虫歯菌が子供の口内に入っちゃうとかなんとか」
「虫歯菌って子供にはないの?」
「二歳くらいまでは虫歯菌が口内に発生することはないそうですよ」
「じゃあこの虫歯菌は親の代から脈々と受け継がれてきた原罪なんだね」
「あなたの述語はいつもデカい」
「主語もデカくて述語デカいなら私はスケールのデカい女ってことでよろしいか?」
「いかにも器の小さい人みたいな威張り方をなさる」
「スケールのデカい女は一々虫歯程度で動じない気がしてきた」
「スケールのデカい女は歯医者にビビったりしませんね」
「いーやーだー歯医者に行ーきーたーくーなーいー」
「行かないんですか?」
「行かない、決めた」
「そうですか」
「うん」
「虫歯はほっとくと普通に死にますよ」
「……………………………………………………………………………………」
「どうかしました?」
「……嘘だよね?」
「虫歯をほっとくと虫歯菌が血管に侵入して体内に回って、それが脳に達すると脳梗塞とかで死にます」
「うせやろ?」
「古代人の寿命がどうして短いか知ってますか?」
「医療技術が発達してなかったからでしょ?」
「そうです、歯が治せないから虫歯で死ぬんです」
「……」
「虫歯にならなくても歯が抜けたり折れたりして食べ物が食べれなくなるからです」
「…………いや、虫歯でも現代なら食べモノ食べられるし」
「新選組の中でも『最強』と謳われた永倉新八の死因は虫歯が原因の骨膜炎と敗血症と言われています」
「えぇ! うっそだぁ!」
「いや本当ですよ」
「だって新選組最強って沖田総司って聞いたよ?」
「そっちかよ」
「最強だから一番隊組長だったんでしょ?」
「アレ別に強さ順ってわけでもないらしいですよ」
「嘘……嘘でしょ? 私の沖田様が最強じゃ……ない??」
「あなた別に新選組好きじゃ無いでしょう」
「でもさ新選組最強の男が虫歯で死んだのかぁ……虫歯すごいね」
「はあ、まあ」
「デカいね、新選組最強を打ち倒すとは虫歯菌はスケールのデカい細菌だね」
「はあ」
「…………」
「…………」
「……細菌なのに、デカい」
「つまんな」
「君のツッコミはいつも鋭い」
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