第180話 ありがとう

素出川は身寄りがない人というカテゴリーにされるみたいだ。

お墓はなく、無縁塚に納骨されている。

墓石が集合しているみたいなピラミッド型になっている。


陽太郎から聞いた時は、寂しそうなイメージ。ってか暗いイメージしか湧かなかった。

けど、素出川はずっと1人だった。

初めて出来た彼女の友子が、両親以外の親しい人間になるんだろう。


……私が、その人物になりたかったけど。


いや。

もう止めよう。

素出川は、もう1人ではないのだ。

多分、ううん。

絶対に、両親共、会えている筈。


私と陽太郎は、無縁塚の前で手を合わせる。


私は「ありがとう」と呟いた。

素出川に伝わったか、分からないけど、言いたかった。


「瞳楽、ありがとうって、変じゃないかい?」

「そうかなぁ? 私はそう思ったんだけど?」

「う〜ん。僕は光にぃのお墓の前では、そう言った事はないよ」

「へぇ〜なんて言うの?」

「またね。だね。あ! 瞳楽! 次は光にぃのお墓へ行こう! 夏が終わる前にさ」

「うん。そうだね。光太郎にも会いたいよ」


私と陽太郎は無縁塚を後にする。

そして振り返る。


「またね。素出川」


そう言った。


第 1 章 〜 瞳楽編 〜 完

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