第50話 決断と準備

「封印を再び今度は僕が行った。だけどそれが破られてから大凡数日は経っていた。だから封印が壊される可能性が高いんだ」

 王は事情をアルミスに言っていた。

「そうなのね……。それじゃあまた戦える人を集める訳?」

「あぁ。それで壱曁達がちょうど見えてね。集めてもらうと聞いていた所なんだ」

 これは手伝った方が良さそうだ。

「分かりました。事情は何となくですが」

 その言葉に王は笑顔をつくり、賛成したボクのところへ歩いてきた。

「ありがとう! 助かるよ」

 ボクの手に合わせ被せるように握った。余程嬉しかったんだろう。

けど、手紙を届けるって言っても歩きじゃ。何より時間が無さそうに見える、それはどうするんだろうか。

「ですが王様。遠くへ行くとしても、私達の足では間に合いそうにないですよ」

 美鈴がそう言うと、王は美鈴の方を向きボクから手を離した。

「その事に関しては問題無いよ。行き帰りで使える転移魔法が城の中にあるんだ」

 ホッとしている。

「それで、いつ届けに行けばいいのかしら?」

「もう三日が経ってて直ぐにでも持っていって貰いたいのは、あるんだけど。しかし君達を巻き込んだ上急げなんて言えない、ある程度準備が出来たら城まで来てほしい」

「なら今日の午後からでどうでしょう?」

 唐突に答えた。

「クルはそれでいいの?」

「大丈夫ですよ、お姉様。二人は問題ありませんか?」

「ボクも美鈴も大丈夫だよ、ね美鈴」

 こくこくと頷いている。

「お兄ちゃん。私が何を言おうとしているのかわかるんですね。まさに一心同体です」

 この不安が薄く漂う空気の中、くだらない事を言ってみんなを安心させている。

「私だってお兄様と仲良しですよ!」

 何を対抗しているんだ。

 そんな中、横を見ると王とアルミスが微笑みその光景を眺めていた。



 しばらくの時間を店の中で過ごすボク等。例の敵への対策。

 帰り際王さんに頼まれた事を思い出す。

――――


「それともう一つお願いがあるんだ」

 ギルドを出ようと歩みを始めた矢先。

「何?」

「アルミス達には是非とも手伝ってほしい。だけど壱曁と美鈴にもこの戦いに出てほしいんだ。もちろん無理はさせない、仲間の治療に当たってくれるだけでいいんだ」

「ボクは構」

「――――ダメよ!」

 荒げる声でかき消され。

「戦いなれてない二人をそんな危ない所に連れていけないわ」

「しかし今の僕達だけの力じゃ絶対に無理だ。だから、頼む。死人を出したくは無いんだ」

 一瞬の間が空気の流れを感じさせる。

「アルミス。役に立つのであれば私は行きます。危険を置いておく訳にはいきませんから。それに話を聞く限り、人数がいないと勝てないような相手みたいですし。数くらいにはなりますよ」

「ボクもついていくよ。なんたってアルミスに魔法を教えてもらったからね」

 悲しいような虚しさの様な雰囲気が見て取れた。

「美鈴、壱曁……。あなた達はそれで良いっていうの」

「お姉様私を忘れていますよ! 戦力はお姉様だけじゃないですから。それに私はまた上手くいくって、思ってます」

「クルまで。あー! 分かったわよ。もうみんな勝手なんだから」

 少し不機嫌そうに最後小さく放った言葉をボクは聞いていた。

――――


 武器や防具の調達と、小道具を少し買おうと予定を組んだのはいいものの。

「防具っていっても重くて装備出来ないし。そもそも盾すらまともに持てないな」

 前とは違う街中の店で、防具を見ていた。

「やっぱり壱曁に防具は無理みたいね」

「魔法があるんだから防具は要らないでしょ?」

「あいつは。魔法の特に防壁なんか関係なく攻撃してくるのよ」

 なんて面倒な敵なんだ。

と、そんな事を考えている内に一通りの買い物が終わったようだ。

 気づけばもうすぐ12:00の鐘の音が鳴ろうとしている。

 準備の終えたボク等は城に向かって歩いていった。

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