第49話 顕れる脅威
「助かったよアルミス。ありがとう」
家に帰ろうと帰路に就いた。
「えぇ」
ボク等が大剣の人と魔物を倒している間に、どうやらアルミスとクルも魔物を倒していたみたいだ。
アルミスが木でできたカゴに魔物の角らしきものを入れて抱えているのが見えた。
カゴは即席で作ったんだろう。
「ところでその戦利品っぽいの、どうするの?」
ボクは聞いた。
売りに行くなら王都に向かうはずだろうと思い、アルミスの方を向く。
「明日ギルドで売るわ。今日はもう遅いからね」
夕日で辺りが照らされオレンジ色に輝いている。
やはり夜行性の魔物の方が強いとかあるんだろうか。それだと、少なくともボクじゃ敵わない。
たぶんだけど、夕方から夜の間は魔物が強くて危険だから早めに帰宅しているって、感じかな。
家に着く頃には日は沈んでいた。
思ったより早くに沈んだが、こっちを見ただけで襲ってくるような凶暴な魔物は見かけていない。
「アルミス、夜行性の魔物とかってやっぱり危険なの?」
「えぇ。魔物によるけどね。でも今日は出くわさなかったわね」
そう言って家のドアを開けて中に入る。家の中全体に明かりが灯され、出迎えてくれる。
スイッチ要らずで便利。
いつものように夕食を食べ自室でゆっくり休む。そろそろこの世界での生活にも慣れてきたんじゃないだろうか。
余程、生活感に差があるとかでもない。だから慣れやすかったんだろう。
次の日。
王都のギルドハウスで昨日手に入れた角らしきものを、アルミスは買い取ってもらっている。
ものによっては値段が高くつくこともあるんだとか。
アルミスとクルが受付で物を売っている間、ボク等が壁際のベンチで休んでいるときだった。
「壱曁と美鈴。少し時間を頂いてもいいかな?」
王はボク等の前に立つ、誰も関係者の居ない中で。
見上げて言った。
「いいですよ。どうしました?」
そう聞いて王は少しホッとしたような表情をした。
何か大事なことでもあるんだろうか。そう思いながらボクは手を握る。
少し間を開けて王は口を開いた。
「唐突な話なんだけど。……君達に手紙を届けてほしいんだ」
「手紙」
「どうして私達に?」
ボクと美鈴は疑問を投げる。
「君達なら安心して任せられると思ったんだ」
王は少し暗い表情をして、続けて口を開こうとする。それにボクは唾を呑み王さんが喋ろうとしていることに聞き耳を立てる。
「あいつが、人類にとって脅威が顕れる。……それで僕たちは今話し合っていてね、どうしてもこの手紙を自分では届けられないんだ。だから、良ければでいいんだけど」
頼み込む王。
「お兄ちゃん」
「何?」
「どうしますか? 私はお兄ちゃんに任せますよ。それとも私が決めましょうか」
美鈴はそう言ってボクを見ている。
「お兄様? 何を話しているんですか?」
「どうしたの。あなたがここに来るなんて珍しいわね」
気づけばクルとアルミスが売却を終えていた。
「……! アルミスにクル。あなた達にもお願いしたい。あいつが顕れそうなんだ!」
そう言って王は頭を軽く下げた。この人が本当に王なのか。と、疑う程のものだ。
「あいつ。それってまさか! だって、あれは封印したはずでしょう⁉」
アルミスが慌てるまでのやつが現れるのか。
「封印が。封印が何者かによって破られていたんだ」
二人は驚きに身を固めていた。
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