第45話 依頼書
次の日の事。
「美鈴ー行くかー?」
美鈴の部屋の前でドアをノックしながら聞いた。
するとドアを開けて美鈴がこちらを覗く。
「もう体は大丈夫なんですか?」
「ん? もう大丈夫だよ。見ての通り、もう動ける」
そう言うとドアの外に出てくる。
「よかったです、元気なお兄ちゃんが見れて。で行くって何処にですか?」
その美鈴の質問を玄関の方に一緒に向かいながら言った。
「ギルドに。依頼受けなきゃなーって」
「また、危険なことするんですか」
「やっぱり戦いに慣れないとって。何か受けやすそうな物にするから。ダメ、かな」
ボクのその言葉に美鈴は足を止め手を後ろに回して組み、拙い笑顔で言った。
「良いですよ。安心してください、今度は何があってもお兄ちゃんをちゃんと守ってみせます」
「……ごめんね心配かけてばかりで。みんなの足を引っ張らないように頑張るから」
「お兄ちゃんが足を引っ張ったことなんて一度も無いですよ。それに私はお兄ちゃんの方が頑張ってるっていつも思っていますから。えっへへへ」
そう美鈴が言うのに合わせて再び歩き始めた。
「美鈴やみんなに助けて貰ってばかりだよ。……いつもありがとう」
「いいのです。でもお兄ちゃんにお礼を言われるのは嬉しいので、もっと言ってください」
「また今度ね」
ボクは美鈴の方を見て笑顔をつくった。
「む~お兄ちゃん。もっと言ってください!」
「言いすぎたら聞き飽きるでしょー」
アルミスの部屋へ向かう階段に就く。
止まる美鈴。
「飽きません! お兄ちゃんの声を聞き飽きることなんて絶対無いんですー!」
「そうかー」
とか言っては開いた距離を小走りで詰めていた。
ノック音が一つ。
「何かしら?」
「依頼受けに行くか聞こうかと。それと転送してもらいたいなって」
「えぇ別にいいけれど。入っていいわよ?」
アルミスの許諾を得てドアを開けて中に入った。
「私も着いて行く。クルにも聞いておくわね」
「うん」
返事をし近くの椅子に座った。
すると美鈴がこっちに来て膝の上に乗り始める。
「重いよ。どいて」
「ふふん。何言われてもどきませんから」
「さてはさっきの事気にしてるな」
「無茶、したがるんですからお兄ちゃんは」
怪我人への軽い治療、壁の上での出来事。どれを取ってもボクは。
「ごもっともです。反省はしてる」
「反省以外もお願いします」
徐々に足が痺れてくる。
そろそろ一つ思い浮かぶもの。目の前の人物の脇腹に両手を入れ、くすぐる。
「い……あははははやめ、やめてははは」
じたばたして笑ってる。美鈴はくすぐられるのに弱い。
「どう、降りる気になった?」
「い、いやです。絶対に降りませあはははは」
今度は手を上げて腋の下をくすぐる。
「あははわか、わかりましたから、はぁはぁやめ……ははは」
「効果は抜群だな」
ボクの声と一緒にして立ち上がる美鈴。
「はぁはぁ。もうひどいですよ!」
息を切らし、涙目でボクの方を向く。
「人の上に座る方がわるい」
「もう!」
結果。
「クルも行くそうよ」
「はーい」
意気揚々と返事をした。
数分後にクルが来て、その流れで王都に移動した。
ボードの前で何にしようか見ていた。
文字は相変わらず読めない。だけど絵が描かれてあるから大体の予想は出来る。
それに美鈴は読めるようになったみたいだから分からなければ聞けるぞ。
いや、自分で覚える努力も必要なんだけど。
「お兄ちゃん、これとかどうです?」
「指定数の魔物退治?」
前にやったような依頼もボードに貼られていたようだ。
「じゃあそれ受けてみるか」
「……お兄様、大丈夫なんですか?」
不安気にボクを見る。
「心配しないで。大丈夫だよ」
確証は無いけれど戦いに慣れないと、いざという時に足手まといになる。
他にもあの不気味なやつを防げるようにしないと。
「お兄様、私もついていますから。頑張ってくださいね!」
クルは心配する中でも応援してくれている。
「ありがとう。頑張れるだけ頑張ってみるね」
「はい!」
そして、美鈴の持ってきた依頼を受けた。
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