第35話 少年。
美鈴の頭を撫で終わった後どうしてボクを呼んだのかを聞く。
「そういや何用だったのボクを呼んで」
美鈴は少し声色を変えて言った。
「それが聞いてください。どこぞのお兄ちゃんときたら妹を置いて勝手に他の人と出掛けるんですよ、酷いですよね」
「はー悪い兄ちゃんが居たもんだ」
「じー」
「景色良かった。あ、あと街でね桃売ってたから食べたんだ美味しかったよ!」
「へー他には」
近づく顔。
「ごめんごめん。そうだその代わりと言っちゃなんだけど。疲れたから美鈴に膝枕でも、お願いしようかな……」
すんなりと了承してくれた。
ボクはまた膝に頭を乗せて休んで。
なんだろう複雑な気分になるよ、大丈夫かなこういう事してて。
「なんだか久しぶりですね、お兄ちゃん」
「そうかな」
目を閉じた。朝から歩いた疲れが体を襲っていたからか楽な体勢をとって。
「そういえばさ。こっちに来てから一回もお風呂入ってないのに、いつも気づいたら汚れ落ちてるんだよね。なんでか知ってる?」
帰ってきて部屋に戻ると毎度ながら思っていたこと。
すごく気になるという訳でもなかったから今まで聞いていなかった。
「なんででしょうね私も知りません。だけどたぶんこのお家に入ると綺麗になっているのかなって思い……」
気づけば顔をそらし力なくして寝ていた。
横になると昼に寝たにも拘わらず眠気は少年を襲った。
「……お兄ちゃん。お疲れ様」
美鈴は膝の上の頭に手を触れさせながら微笑む。
同じ夢だ。街にいた時に見た夢と。
これはいったい何を意味しているのかてんで分からない。
前のは自分の意思で動かしていたが、今回はどうしても体を自分の意思で動かすことが出来ない。
だが動き方が似てリプレイを見ているような感覚。
見続けると前回のように誰かの不適な笑みで視界が暗転した。そして。
お な じ リ プ レ イ が な ん か い も ……。
数回その光景を見た後視界が暗くなったまま数分が経ち、いつの間にかに少年がこちらを笑顔で見ていた。
背が低く眼は何も映さない。そんな感じがした。両手は赤く染まり左手に小さなナイフを持っている。
ナイフからポタポタと流れ落ちる赤く染まったもの。
「あぁいつか。その日はやってくる」
気づけば目が覚めていた。
「おはようございます、お兄ちゃん。と言ってももうすぐ晩御飯ですが。よく寝れましたか?」
「あ。うん疲れは取れたかな」
「無理はダメですよ」
「心配させてごめんね」
「いえいえ」
そのあと少し駄弁り晩御飯を食べ終え自室に戻った。
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