第30話 独白

 一人。少年の頭を膝の上に乗せ、寝かしつけている。

 少年の頭を撫でながら笑顔をつくっている。

「どうして。私はこんなにも癒された気分になっているの……」

 寝ている少年を起こさないようにと、小声で。

誰に問いかける訳でも聞いてもらいたいわけでもない言葉を吐く。


 時間とともに一つの考えが浮かぶ。

「そう。いつの間にか……私達を認めてくれた壱曁達を特別視していたのかもしれないわね」

 迫害によって両親を殺されいつの間にか心を閉ざしていた姉妹。

深く周りと関わらない用に避けるようにしてきた人間との関係。

「……でもどうしてそこまで。優しくするの」

 ただ分からなかった。彼等がどうして振り向いてくれるのか。

優しく接して、楽しさや喜びを分けてくれるのか。

「勝手に……家族に迎い入れたのに、笑っていてくれる」

 エゴのようなものかもしれず自分勝手に巻き込んでしまっただけ。

攻寄る妹を説得していれば済む話だったはずなのに。

 それでも。

「ただ優しい。それだけなのかもしれない」

 彼等の事を全て把握しているわけではない。寧ろ殆ど知らない。

 しかし不思議と喜びをくれる彼等は、光のように姉妹を変えていった。

「あなた達に会えて、本当に…よかったわ。……クルが正しかったのね」

 本人の前で、しかしながら寝ている少年に囁く。

 暖かさというものを久しぶりに感じる。

 それと同時に離れないでほしいという感情が押し寄せた。

「……もし。あなた達を失ったら、私は――――」

 人の温もり、優しさに触れるたび増幅する。離れてほしくないという感情。

故に家族に迎い入れたといえるだろう。



「アルミスは心配性だな。大丈夫だよ、いつでも傍にいるから。だっていろいろと世話になってるしね」

 目が覚めるとアルミスが一人言をいっていた。

何を言っているのか気になり目を閉じたままアルミスの一人言を聞いていた。

「あ、あら。起きていたのね。ごめんなさい起こしてしまって」

 ボクが目を開き唐突に喋ったことにより、アルミスは驚いた表情をとる。

 後に笑みを浮かべた。

「壱曁。ありがとう。……これからもよろしく頼むわね?」

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