第23話 今宵の晩餐

『おはよう。壱曁』

「うわっ、びびった」

 ホラゲーしていた時にちょうどアルミスが脳内に話しかけてきた。

 そうやって人を驚かせるのはよくないと思うんですけど。

『驚かせたつもりはないのだけど。まぁいいわ。起きてくれてありがとね、クルも喜ぶわ』

 あーうん。

 あと……ごめん。

『あら、ちゃんとそういうこと言えるのね』

 ……ねぇバカにしてない?

『誉めたのよ』

 ホント?


 さっきのアルミスが話しかけてきた時間から数分後に玄関の扉を開ける音がした。

ボクはそれに合わせて玄関に向かった。

「お帰り。それと、心配かけてごめんね」

「お帰りなさい」

 帰ってきたアルミスとクルに言葉をかける。

 気づけば隣に美鈴が居た。おそらくボクと同じく扉の音で気づいて来たのだろう。

「ただいま。そして改めて壱曁、おはよう。起きるのがもう少し遅れていたら招待状が無駄になるところだったわ」

 アルミスとクルは麻袋みたいなものに食材を詰めて抱えていた。

「あはは…ごめん。なんか倒れてばかりで」

 そう言った直後にクルは袋をアルミスに半ば強引に渡し、跳びついてきた。

その反動でバランスを崩し、倒れた。

背中に衝撃が走り痛くなっていく。

「ちょ、いきなり飛びつかないで。背中痛い」

「お兄様…。もう起きないんじゃないかって思うほど心配したんですよ!!」

 悲しそうな目でクルは言ってきた。

ボクは体を起こして立ち上がり、返答した。

「ごめんね、心配かけて。…でも無事復帰したぞ」

 クルは何も言わず、ボクの左手を両手で強く握っている。

 昨日にあった事をボクは思い出せないまま、もしくは思い出したくないのか。

謎に包まれ時間は過ぎた。


「招待状、みんな持った?」

 アルミスが尋ねた。例の王から食事の招待だ。

黒を主体とした金であしらわれた綺麗な模様が高級感を出していた。

流石一国の王ともなると招待状にすら気品を感じる。

「ボクは持った。というか鞄に入れてる」

 背中に肩にかける小さいリュックのような鞄だ。以前はよく使っていた。

今は買い物目的で外に出るとき以外、だいたい部屋に置いている。

 他のみんなも持ったと言って王都に行った。


「待っていましたよさぁ中に御入り下さい。王が待っています」

 鎧を着た男性に挨拶をし中に入った。

「うぉースゲー。夢にまで見たお城に入ってる!」

 装飾や声が響く感じに、ボクは興奮していた。

「お兄ちゃんあんな大きいシャンデリア初めて実際に見ました」

「あなた達ってどこに暮らしてたのよ…。…まぁでもなぜかこっちまで嬉しくなれるわね」

「そこがお兄様と美鈴の良いところです! …私達はそんなすごい人に会えたんです」

「うふふ、そうね」

 そうして食事の部屋に着いた。

広い部屋に大きい机、イスの量。壁の装飾。あ、暖炉もあるな。

「アルミスさん。ずいぶんと賑やかになりましたね。その喜びがあれば以前のような…。と皆さんの前でしたね」

「別に気にしなくていいわ。その内はなすかもしれない話だし。そもそも大それた話でもないことだし」

 王はアルミスの側に来て言った。

「ミス、アルミスこちらへ。奥の席へご案内致します」

「ありがとう」

 ボク達もそれに続いて歩き席に着いた。


「―――皆様、今日は来ていただきありがとうございます。

アルミスさん、クルさん、壱曁さん、美鈴さん。今宵の食事の席をどうぞ気軽に楽しんでいってください」

 軽くお辞儀をして座った。

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