第20話 心配事
「夕食できましたよ」
その日の夕方、クルの声が聞こえた。
ボク、美鈴、アルミスは魔法の練習で庭に居ていたため、晩御飯はクルに任せていた。
美鈴もだいぶ魔法を使い慣れてきたみたいだ。
ボクよりあとに練習始めたにも関わらず、もうボクより上手い。
美鈴は頭が良い。
ボクなんかより要領が良いんだろうと、半分諦めている。
「壱曁も美鈴も、もう一人前ね」
「お陰さまで」
「お陰で魔法が習得出来ました。ありがとうございます!」
ボクのあとに続いて美鈴はそう言った。
魔法がある程度使えるようになって嬉しいようだ。美鈴の嬉しさがボクに伝わるほどだ。
「それじゃ、夕食にしましょう」
アルミスはそう言って家の方へ歩いていった。ボク等もそれに合わせて歩み始めた。
「お兄様、お疲れ様です。魔法は使えるようになったようですね!」
「ありがとう。美鈴も上達出来たしね」
隣に美鈴。向かい側ボクの前にクル、その隣にアルミスといった並びで座っている。1つ空席がある。
クルはボクの隣が良いとは言わなかった。
クルが美鈴を少しは信頼した感じなのかな。美鈴も十分クル達ととけ込んでいる。良いじゃないか。
食事後、ボクと美鈴が部屋に戻ろうとするのを
止められた。
「お兄様、美鈴。……私はあなた達とずっと。一緒に生きていたい、日々を暮らしたいんです……」
クルはそう言って両手を前で組んで俯く。
「私達は居なくなりませんよ。お兄ちゃんも楽しそうですし、何より私達は家族なんでしょう?」
「美鈴。私はお兄様と美鈴が大好きです。だから一緒に笑っていて下さい。お兄様と美鈴、みんなでずっとこの場所に居て下さい!」
そう言ってクルは顔を上げた。
「「もちろん(です)」」
ボクが答えようとしたら美鈴も言っていた。
何か心配事があったのかもしれない。今ので解決していると良いけど。
クルは精一杯の笑顔をつくって見せていた。
次の日の朝、朝食を取っている時だ。
「すみません」
ノック音に合わせて誰かの声が玄関から聞こえた。
誰かは知らないが内容は思い当たる節がある。
そう思いながら、ドアを開けて玄関でアルミスが話しているのをボクは見ていた。
「夕食の誘い、明日だそうよ」
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