第19話 王

 空を見ていた。

「毎日楽しいなー」

 気だるさからか声を小さくして適当なことを喋っていた。

「お兄ちゃん?」

 隣に座っている美鈴が不思議そうな顔でこちらを見ていた。

「あー少し感傷に浸っているだけだよーなんでもなーい」

「…私も楽しいですよ」

 笑顔でボクを見ていた。


 ある程度時間を潰していると、周りの人等が同じところに集まっていっていた。

「何の騒ぎ?」

「あれは、王が帰ってきた感じね」

「王? さっき言ってた人?」

 そんな事を話していると、白馬に乗った若い王が前を通ろうとしていた。どうやら通り道だったらしい。

 こっちに気づいたのか王は馬から降りて歩いてきていた。

「先日はありがとうございました」

「私が勝手にやったことだもの。気にしないで」

「いえ、王として助けられたまま何もしないというのは恥」

 アルミスは立ち上がって言った。

「…みんな帰るわよ」

 その言葉にクルは立ち上がる。

ただその場できょとんとして立ち上がることすら忘れていたボクと美鈴。それを見たクルは口を開いた。

「行きますよ、お二人さん」

 え、いいの? 返事しなくて。

 疑問を浮かべつつもボク等が歩き始めると、アルミスは振り返った。

「礼がしたいと言うなら、今度夕食を振る舞ってくれると嬉しいわ」

 その言葉と同時に王は頭を軽く下げ、言う。

「ありがとうございます。それでは後日招待状を手配します」

 あぁ、丸く収まってくれた。


 王都を出て徒歩で家に帰ることになった。

どうやら転送魔法は片道分、もとい行きだけしか出来ないらしい。

 家に帰る頃には疲れているんだろうと思っていたが、案外疲れていなかった。魔法の練習が少し効いたようだな。

「はぁ。後は部屋で休もー」

 そう言ってボクが家に入るのを、アルミスがボクの腕を掴んだ事によって阻止された。

「「まだ魔法の訓練は終わってないわよ?(終わってないですよお兄ちゃん)」」

 アルミスと美鈴が揃って言った。仲良くボクの休憩を阻止しないでほしい。

「ボクを休ませて」

 笑顔をつくって言ったが、気怠さも相まって抵抗できない。二人に腕を持っていかれている。

 腕を思いきり引っ張って足で地面を強く踏んでみるが、無理。持っていかれる。

「魔法の練習がしたいって言いだしたのは壱曁よ? 休ませてなんてあげないわ」

「もう疲れた…あぁあぁ。美鈴ー体には気をつけないといけないんだろー休ませてよー」

「お兄ちゃんはまだ動けますから。それに休憩はしましたよ」

「抵抗できないお兄様。ふふ、面白いですね。へへへ」

「見てないで助け――」

「いやです♪」

 さえぎるようにクルは言う。

「ひどくない?」

「へへへへ、だって面白いんですもの。止めるわけにはいきません」

 面白がられて助けてくれない。過去にも似たようなことがあったような。

 そうこう考えているうちに練習に使っていた庭までつれられた。

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