第18話 武器は性能と見た目の両立が大事

 この前に使った転送魔法で買い物に行こうとしていた時、ドアが開いた。

「何も言わず出掛けるなんて私が許しません」

 そう言って入ってきたのはクルだった。

 ボク等の方へ歩いてきて転送の範囲内に入った。

「そう簡単にはいかないわね」

「お姉様とお兄様二人だけでお出掛けなんて、デートなんてさせません!」

「デートなんてするつもりなかったんだけど」

「あら私はデートのつもりだったわ。壱曁の好感を上げようと思ったのに」

 少し残念そうにアルミスは言った。

「十分得てると思うけどね?」

「そうなの?」

 嬉しそうな表情をつくっている。

「私はお兄様がいつでも大好きです! へへへへ」

 クルはいつもと変わらずそう言っていた。頬に両手を押さえながら。

「うん毎回聞いてるよ」

「むー……。毎回のように聞き流さないで下さい!」

 似たような会話が少し続き、気づけば美鈴がドアを開けて入って来ていた。

念のため待っていたけれどおかげで功を奏したようだ。

「美鈴よく来たね」

「? さっきアルミスが言ってたじゃないですか」

「あれ、そうだっけ」

 記憶がないな。だいぶ疲れていたしそのせいかもしれない。

慣れないことするとこうなるものだよな。気をつけないと。

「お兄ちゃん。ちゃんと人の話は聞かないとダメですからね。大事なことを言っている時もあるんですから」

 少しの笑顔を含めて言ってくる。

「あぁごめん」

 それじゃあさっきの、デートって話はからかってのことになるのか。またからかわれたー。

『えぇ、楽しいもの。でもよく分かったわね、からかいすぎたかしら。……けれどデートはしてみたいわ。だって面白そうだもの』

 あー。いろいろ言いたいけど。ボクはする気ないからねー。

『へー』

 何か?

『なんでもないわ』

「……ちゃん、聞いてますか?」

 目の前の美鈴が少々怒り口調で言っていた。

聞きそびれた。

「あ。えっとー……」

「練習も大事ですが体には気をつけてくださいねって言ってるんです! また聞いてなかったんですね、もう」

「……お兄様」

 二人は心配そうにしている。

疲れが顔に出ていたのかな。少し休んだ方が良いのかもしれないな。

「はははごめんごめん、大丈夫だよ」

 苦笑いを返しながら美鈴とクルにそう言った。

「壱曁の言う通り大丈夫よ美鈴。あなたも壱曁も、もし倒れても看病してあげる予定よ」

「……ありがとうございます。アルミスってそんな事言うんですね」

 アルミスをじっと見て少し微笑みつつ言う。

「なによ私がなにもしない人に見えるわけ?」

「いえ、ごめんなさい。少し面白かっただけです」

「まぁともかく疲れて倒れそうなら休む。それだけよ、分かったわね?」

 腰に手を当てアルミスはボクと美鈴を見て言った。

「「うん(はい)」」

 同時に答える。

「……私はお兄様を看病します!」

 転送の際の光が発生しているなかで、クルは最後にそう言っていた。

「倒れたらね」


 転送魔法で王都の路地に着いた。これ楽で良いな。それに来ると既に靴を履いてるってのも便利なものだし。

「そういや、買い物って何を買いに来たんだ?」

 ボク等は町中を歩いている。その先には出店のようなものが両サイドにたくさんあった。これぞ王道ファンタジーってのが感じられる景色だ。

それとなく美鈴も楽しそうで、なにより。

「夕食の材料よ。壱曁と美鈴にこの辺の街の案内を含めてね」

「案内。ありがとう」

「いいのよ。あ、それとあなたたちに武器を買ってあげるわ。後々役立つでしょ?」

 どうしてそこまでしてくれるんだと思いボクは聞いた。

「せめてものお礼をしたいのよ」

「礼なんてされる覚えがないけど。……けど、お礼してくれるって言うなら素直に受け取らないとね」

「ありがと」


「だいたい食材は揃ったわね」

 そう言ってアルミスはボク等を武器屋に案内した。

 細い路地を抜け、小さな広場に出る。周りは民家で囲まれていて来た道以外に道は無い。

屋根が重なって薄暗い場所だ。

「ここよ」

 民家の勝手口にも見える扉の前に着いた。

 アルミスに続き中に入ると、独特な匂いの放つ店内に武器や防具らしきものが目に入った。

まるでゲームをやっているかのような感覚に陥った。

「お兄ちゃん! 凄いですねここ」

 美鈴はさっきからずっとこの調子だ。

楽しいのはボクも同じだが、少しは落ちつこうと美鈴に言ってもこのままだった。

「楽しそうね。見慣れている私たちですらその楽しさに感化されそう」

「お兄様お兄様! あの服とか着て下さい。絶対似合いますから!」

 遮るようにクルは言った。

「今日は武器を見に来たんだからそれはまた今度ね」

「むうー」

 武器屋というわりには服、防具もある程度置いてあって品揃えは良かった。

「壱曁ならこんなのはどうかしら?」

 凝った装飾はなくシンプルな剣をボクに見せてきた。

「うーん」

 こういう物を選ぶとき、大抵性能と見た目が両立出来たやつをボクはゲームで選んでたな。

そういうわけで性能をまずは聞くことにした。

「これって、どんな能力があるの? もしくは無いとか?」

 そんなボクの言葉にアルミスは剣についているタグを読んで言った。

「能力はあるわね。これは剣にこめた魔法の属性特攻、らしいわ。要は相手の属性に合わせたら強くなるってことね」

 おぉ。RPGやってる気分だ。自然とボクは笑みを浮かべていた。

「じゃあそれにするよ」

「決断が早いわね」

 そう言って、アルミスは美鈴のもとへ行き、合う武器を見繕っている。

 ガタンッ。

店の奥で小さく音が鳴ったおかげで少し驚いたよ。姿は見えないけど店員かな、さっきの物音。

 しばらく悩んでアルミスに言っている。

どうやら美鈴は弓矢にするらしい。装飾はいたって普通だが性能は良いんだろうな。

 そういや出費大丈夫かな、アルミス。結構高そうだけどこれとあれ。

「よし、決まったわね。あとは買うだけだからみんな外で待ってて」

「?」

「さぁ早く出ますよお兄様。美鈴も」

「えーもうちょっとだけ見てちゃダメですか?」

「ダメです」


「ありがとうございます、アルミス」

 アルミスが店を出た直後、美鈴は礼を言っていた。

「ありがとう」

 ボクも続いた。

「ふふ、いいのよ気にしないで」

 余った時間にと、町も案内してもらった。

そのあと広場にあるベンチに座って休憩を取ることにした。

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