第17話 笑顔

 ――――魔法の練習が主だったけれど。庭で机を囲んでお茶しながら話したり走り回って遊んだり、しんどいながらも楽しく過ごしていたらあっという間に2週間近く経っていた。


 特にこれといって取り立てるものもなく、この環境にも見慣れてきていた頃。

「壱曁もだいぶ上達したようね」

「はぁはぁ。も、もうダメ…だ…」

 ずっと練習している内に疲労が溜まりにたまって息が切れ、その場に仰向けに寝転がった。

 いつの間にか美鈴も練習していた。ボクより上達が早くて流石美鈴だなっていつも感心してる。兄に勝る妹とはこの事なんだろうな。

 それに最初こそ不機嫌そうな顔をみんなに見せていたけど、だんだん仲良くなってきてて、嬉しいよ。

美鈴に"ボク以外に見せる笑顔"が増えてきたように感じる。

「お疲れ様。少し休憩にしましょう。それが終わったら買い物に行くわよ」

「あー」

 休憩がてら耳を澄ませてみる。周りの木々がこだまするように、風に揺られ音を出していた。

「休憩ですか?」

「うん」

「じゃあ私も」

 ボクは血の繋がった家族がボクだけで心細い、なんてのが無くなる事を願う。


 アルミスの自室にて。

「あぁ、アルミス」

 椅子に座って寛いでいたボクは少し気になったことを準備をしているアルミスに聞こうとしている。

「今さら……なんだけどさ。王都に行ったりして大丈夫なの? 親の事で何かあるとか」

「もう200年程前の話よ? 誰も私たちの事なんて知らないわ」

 後ろを向くアルミスから少し哀しげな雰囲気がでている。

それなら傷つける者は誰もいないというのに。

「ごめんまた変なこと聞いた」

「いいわ、気になっただけでしょ。……それに今の王は優しいヒトだから大丈夫」

 寂しいのかな。

 仕度を済ませ鞄を肩から掛けるアルミス。椅子から立ち上がって一言。

「ボク等は知ってるよ、アルミスとクルを知ってる。だって家族だから」

 アルミスは少し驚いたような、しかしながら笑顔で言った。

「……ありがとう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る