第15話 仲良しまでの道のり
「でも確かに……アルミスの声だったはずなんだけど」
美鈴とクルが料理勝負とかで一生懸命作っているなか、ボクとアルミスは食卓を囲む椅子に座って話していた。
「私はあなたと話が終わった後すぐここに来た。その時一切あなたに話しかけてないわよ」
「うーんやっぱり空耳だったのかな」
「不思議な事もあるものね」
独り言に答え、アルミスはボクの右斜め隣に座りなおしていた。
「……さっきはありがとね。意外と話を聞いてもらうだけでもすっきりするものね」
「ボクの方こそ。会って間もないのに、こんなに優しくしてもらえて嬉しいよ。ありがとう」
「あら、口が達者ね。本当かしら?」
「勿論」
笑顔を見せながら返した。
「やっぱりあの人の……」
「なんて?」
聞こえなかった部分を聞きなおそうとそう言った時にちょうど。
「「お兄ちゃん(様)、出来ました!」」
「おぉ、ありがとう二人とも。お疲れ様」
豪華な料理が並んでいる。美鈴が料理上手なのは知っていたけど、クルもすごく上手に作っているようだ。
クルは料理を出し終わった後、ボクの左横の席に座ろうとしていた。
「そこは私の席です。何勝手に座ろうとしているんですか!」
「仕方ないんです。だってお兄様に食べさせてあげなくてはいけませんから」
まったく懲りもせず言い争いばかりだな。あとクル、さりげなく何言ってるんだ。
けど、この二人実は仲良いんだよな。ボクが見る限り。
「はあ、いいですよ別に」
お、美鈴から退いた。ついに諦めたのか。
「お兄ちゃんが私の料理を食べてくれる。それだけで良いんです」
「お兄様には私の料理も食べていただきますけどね♪」
あれ待って、結構な量食べないといけない感じじゃない。ボク少食なんだけど。
しかも勝負の勝ち負けも決めないといけないのか。これは疲れる。
『ちょっとは素直に話せるようになったかしら、ふたり』
あ、アルミス。……もしかしてと思ったけど策士だよね。席を変えたのってそういうことでしょ?
『えぇ』
やっぱり。
それはそうと、この脳内語りがけ流行ってるの? やりすぎな気がする。その内洗脳されそうだよ。
『いちと、いちと、いちと』
いやいや、やめてやめて。
「ふふ」
「はぁ」
食事後、ボクは料理の勝敗を迫られたが、両方美味しかったと言って済ませた。
二人とも不満そうにしていたけれど、ボクが美味しいと言ったのが嬉しかったようで勝敗の事は流してくれた。助かった。
そのあと自室で美鈴と二人で話をしていた。
月明かりが照らす部屋の中。
「お兄ちゃん。私とクルが料理をしてる間、アルミスと何話していたんですか?」
「あー特に話すようなことは何もなかったぞ?」
「……そうですか。お兄ちゃん、私こっちで寝ますね」
「戻らないのか」
ベッドに座って言った。
「それと今日、パソコン鞄に入れるの忘れててごめんなさい。私のなら入るのに」
「いいよいいよ謝らなくて。どうせボクのなんだし、美鈴は悪くないでしょ?」
「でも見られちゃいました」
「その上持ってきてくれたしね。まぁなんとかなるよ、きっとね」
反省の顔色を浮かべる美鈴に続けて言う。
「それに何より美鈴が無事だったんだから、問題なしだ」
ね、というように笑顔を見せる。
「……シスコン。お兄ちゃんのシスコン!」
「ちょ、ひどくない?」
「私の心配ばかりするからです」
笑い混じりの顔で。いたずらでもするかのように。
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