第14話 壱曁と■■と
それでどうしてボクが?
『似ていたから…と言うべきかしらね』
似ていたって顔とか雰囲気とか?
『雰囲気はよく似ているわ。だけどあなたには少し違う何かを感じるの』
そうなのか?
まぁ確かにボクには過去の記憶がない。だからその時の癖みたいなものがあるのかもしれないな。
『そんな事初めて聞いたわ……。あなた記憶喪失なの?』
そうだね。思い出そうとすると、何か、靄がかかったような感じになるんだよ。
『ふーん。壱曁から感じる不思議はそこにあるのね』
不思議か。
まぁいったんこの話は終わっておこう。
『そうね。そういや美鈴とクルが何か作っているみたいよ?』
あーなんか嫌な予感が……。不味いとか美味しいとかじゃなくて、もっと他の。
『あなたの予感は当たりそうね♪』
当たってほしくないよ。
そう思いつつもボクは、自分の部屋でゲームをして時間を潰していた。
空がオレンジがかり、夜を迎える頃。
「……お兄ちゃん。もし何かあっても私が必ず助けます。……絶対に」
それは誓いのように重いもの。どんなことがあっても兄だけは守るという、信念そのもの。
それは誰かに向けた、疑念。思いがけない事への対処法だろう。
壁掛け時計を目に。
「そろそろ晩御飯時ですか。私達は住まわせてもらう身、ご飯くらいは作りますよ」
『ありがとうね。キッチンの場所まで案内するわ』
突如として聞こえたその声に驚く美鈴。
「やめてください。そういうの」
『あら、壱曁と同じ反応』
「当然です。私とお兄ちゃんは一心同体ですから」
『ふふ。それはそうと、その光で案内するからついていってね』
「この目の前の光……ですか?」
『えぇ』
「あの、私の事見えてるんですか?」
『もちろん。見えているわよ、はっきりとね』
「――――先を越されました。クル……!」
「なんですか? 私、お兄様達の晩御飯を作るので忙しいのですよ。邪魔しないで下さい」
食材等を並べながら返答していた。
「お兄ちゃんに晩御飯を作るのは私の役目なんですが」
「じゃあ、料理勝負開催ということにしたら?」
言い争うところに入ってそんな提案をしていた。
「お姉様。良いですね。それなら私は絶対に負けません!」
「私が一番お兄ちゃんを知ってますから、私が有利ですよ」
そう言って二人は張りきり、料理を作り始めた。
ダイニングへ歩いていくと三人の喋り声が聞こえてきた。
「……やっぱり。アルミスが仕掛けたんじゃないか、まったく」
「ふふふ、バレてしまったわね。それにしてももう少し部屋でゆっくりするのかと思ったのだけど。存外早かったのね」
「え、アルミスが呼んだんじゃないのか?」
「なんの事かしら?」
「ここまで来てって言われた気がしたんだけど」
「そんなこと言ってないわよ」
「……え。じゃあいったい誰が」
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