第13話 過去の考察
「今日も来てくれたんだ」
「うん!」
「気に入ってもらえて嬉しいよ」
「えへへ♪」
教会にただ二人の声だけが聞こえる。オルガンの音色とともに。
――――――――
『そんな事が続き、仲良くなっていったようね。気づけば家に招き入れるようになっていたわ』
ということは、その少年とクルが仲良くなって次第に家族みたいな感じになったと。だけど人間と吸血鬼じゃあ寿命も違うからすぐに死別した。
ってことはボクは入れ替えみたいなものかな。
『ちょっと待って。今のでそこまで考察出来るなら、どうしてさっきの話で分からないなんて言ったのよ』
あぁごめん。さっきの情報じゃあ、ね。
『はぁ。少しでも理解が増えたのなら良かった、と言うべきなのかしら。……まぁでも実際少し違っているものね』
ほらやっぱりー。だから言ったんだぞー。
『その少年ってのは。さっきの話の続きになるけれど、家でもよく遊んでいて本当に家族みたいだった。そんなある日。王家から勇者として学びを受けることになって、数年間クルと手紙を交わす事すらできなくなったわ。そして少年……彼が帰ってきたのは4年程後で突然家に来たのよ。再開を喜んでいると彼は唐突に魔王退治に行くと言い出したの。もちろん私達は止めたわ。だけど、行く以外に選択肢はなく彼の背中を見守るだけだった。それから数ヶ月、私とクルで買い物に行っている時に噂話を聞いたの。”勇者が負けて帰って来た。仲間をほとんど失って帰って来た愚か者だ”って。その時クルは走って帰っていった。……だけど私は聞いたのよ、彼は自殺したって。後にクルにはちゃんと話したわ』
それで今に至ると。
『えぇ』
それで、両親はどうして……?
『あっさり聞くのね』
ごめん、つい気になって何も考えてなかった。ごめんなさい。
『別にいいわよ、話す事だし。……彼が死んだ後、父さんは王に呼ばれて城に行ったの。内容は<勇者を死に追いやったのは貴様だろ>などと言いがかりをつけられ、絞首刑。その後家に火をつけられ王兵が攻めてきて、母は私たちを守るように逃げさせて、殺された。皮肉にも私の目に母の殺される瞬間がはいった。そしてこの屋敷に逃げてきて今に至るわ』
苦しかった、悲しかったね。なんて声をかけるぐらいしかできないけれど。……知れて良かった。ありがとう教えてくれて。
『どういたしまして。私の方こそありがとう、話させてくれて。ちゃんと聞いてくれて嬉しかったわ』
話したかったんだ。ということは少しは心のもやもやも消せた、のかな?
『えぇ』
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