第12話 どうして
一息と壁沿いのソファーに座り、窓の外を眺めた。木と窓枠の隙間から空がちょっとだけ見える。
扉の先に居たクルの姿が気づけばなくなっていた。自室に戻ったんだろうか。
今さらなんだが、何故ボク等は家族なんかに誘われたんだろう。疑問が頭を過る。
特にあの姉妹に大それた事なんてしてない。……美鈴とクルはケンカをよくするし。
『理由が知りたい?』
「――っ!」
「びっくりした。心臓に悪いよ」
『ごめんなさいね』
えっとそれでボク等を家族に迎え入れた理由を教えてもらっていい。
『クルが昔一緒に遊んでいた子の事を思いあなたを、あなた達を家族に迎え入れたいと言ったのよ。それで私は同意したの』
んーよく分からない。いやまぁクルが提案したんだろうとはうすうす感じてたんだけどね。
『…はぁ仕方ないわね。もうこれは昔の話になるわ。200年程昔の話。私たちはその頃王都の方で暮らしていたの。……父さんと母さんはクルを産んでから10年程で死んでね』
結構昔に遡る。いやそれより。それってボクに話していいの?
『バカにしたりする?』
そんなことしないよ。
『じゃあ良いわ』
――――――――
海辺を1人の少女が夕陽を横に歩いている。特に目的は無く歩いている。
すると、近くの教会からオルガンの音色が聞こえてきた。その音色につられて教会の扉を開けると1人の少年がそれを弾いていた。
周りには誰も居ず、少年がただ1人オルガンの前に座り弾き続けている。
「何弾いているの?」
少女は今尚弾き続ける少年に聞く。少年は引き続けながら質問に答えた。
「んー、適当に弾いてるから何とは言えないな」
少女は少年の近くに行き、並んでいる椅子に座った。
「良い音ー」
「オルガンは落ち着く音を出してくれる。だからこそ教会にあるんだ」
そして弾き終わった少年は、少女の方へ歩みを進め横に座った。
「聴いてくれてありがとう」
「落ち着いたぁ~♪」
笑顔で少女は言った。
――――それが全ての始まりだった。
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