王道のように偽装されたアンチラノベ的小説

41話までを読んだレビューです。

多分この作者はオタクじゃない。

女装した主人公は超美少女で、周囲の美少女達からモテまくるというオタク好みの王道設定。

ヒロインはツンデレ幼なじみに、王子様女子に、ベタ惚れ後輩、ミステリアスな毒舌メイドというオタクに媚びたキャスティング。

中盤までのハーレムものにありがちな、よくある展開に露骨な性描写。

一読しただけでは、オタクの自己願望溢れる妄想ダダ漏れの酷い小説に思えるが、中盤以降の展開を読んでいるうちに、登場するキャラクター達が、オタクが喜ぶ御都合主義で脳みそお花畑のアニメ的なヒロインではなく、欲望に忠実な一人の人間として描かれていることに気がつく。

ツンデレやヤンデレと言った属性として、キャラクターをアニメやラノベ的な記号のように扱っているようで、その実はかなり生々しく女性の悪いとこや怖いところを書いている。

作者は女性か、でなければ相当な女嫌いでなければ、ラノベ風にここまで書けないだろう。美少女ラノベが好きなだけのオタクには難しい。

確かにストーリーは凡作で、目新しいものはない。けれど、節々に感じる作者の作家性とも言うべき狂気がそこかしこから滲み出ていて、目が離せないのも確かだ。

露骨な性描写や、後半のオタク好まざる展開は万人にお勧め出来るような小説ではないが、私はシンプルにこの小説が好きだ。

使い古された展開も、この作者が描くとまた違って見えるのは私の気のせいではないはず。