この食料がなくなったら死のうと思う
南光たび
第1章 半世紀
第1話 決別の意思
カップ麺の焼きそば3個、レンジで温めるご飯3個、ファミリーパックのアイスクリーム3箱、プロセスチーズ5パック、いわしせんべい1袋。
今手元にある食料のすべて。
これらの食料がなくなったら死のうと思う。
正直なところ、もうやりたいことが見つからない。
いつも私がやりたかったことというのは、必ず根源に何か不満があって、そこから逃げるための案だったということに今気づいた。
建設的な理由と根拠があると自分で思い込んでいただけで、実際はそんなに格好の良い内容ではない。
自分の中では正当化して「今度はこんな新しい案が浮かんで、それをやってみたいんだ。」などと人に話し、それを聞いた人からは必ず「へぇ、すごいね。行動力があって羨ましい。」という感想をもらい、さぞかし自分が高い位置へ行ったような気がして自己満足していた。
どこか自己陶酔していたのかもしれない。
自分の生活を充実した雰囲気にしたくて、人が集まる場所に出向き交流をしてみたりした。
最初は皆、変わり者の私の存在を面白がり、たくさんの人が興味を持って寄ってくる。
しかし、私は人と常に一緒にいることが苦痛になってきてしまう。
学生の頃から一匹狼。
人と群れるのが嫌いだ。
それに私の価値観や行動のペースに合う人はいない。
人と一緒に過ごすとしたら、私が合わせるか相手に合わせてもらうか。
どちらであっても私は苦痛に感じる。
人に気を使って合わせるのは疲れるし、人に合わせてもらうことも気が引けるし、気になって仕方がない。
一人でいることが一番ストレスフリーだ。
自分の寂しさを埋めるために人と過ごすことも嫌いだ。
本当に心が通っていて信頼できる人でなければ、一緒にいても寂しさは埋まらないからだ。
そのような難しい性格ゆえ、私は人との出会いがあってもすぐに一人でいるほうを好んだ。
どんなに良い人たちや、良い集まりがあっても、私は結局一人を好むため交わることはなかった。
気がつくと、私は一人になるべくしてなっていた。
自分がこんなに面倒くさい性格であることに気づき、ますます嫌気がさしている。
この先に希望が見えない。
近い将来にも、遠い将来にも光が見えない。
楽しみにしていることが一つもない。
やってみたいと思ったことはだいたいやり尽くしてしまい、それらにも苦い結果が見えた。
どんなに格好良く見えることや、憧れの世界にも、それらには裏の顔があり、”世の中はそんなに綺麗ごとでは成り立っていない”という独自の感想を持って終わる。
憧れて入った世界は、想像どおりの煌めく世界ではなく、想像をはるかに下回る最低な出来事や側面を持つ。
そして、それらの真実を知った上でも続けていきたいかどうかと自分に問うと、そうではない。
思い描いていた世界とは違うので、もう辞めて良い。
そういう結論に至る。
そうしてどんなこともすぐに見切りをつけて辞めてきた。
その結果、私にはこれといって誇れるものは何も残っていない。
自分がそういうことを繰り返していることに、今になって気づき、それが最大の嫌気になっている。
今自分が置かれている状況も、どれもこれも嫌だ。
今の仕事内容も気に入らない上に、金銭面でも苦しい。
嫌な思いをして仕事をこなしているのに、何一つ楽しいこともない。
毎日が嫌なことだらけの中で生活している。
納得や満足できていることなど、一つもない。
そしてこの先も希望が見えないのなら、もう生きていなくて良いのではないか。
数か月前からずっとそういうことを考えている。
生きる意欲がないのだから、今ある食料がなくなったらそのまま死のうと。
それが自然な流れなのではないだろうか。
残りの食料の残量からすると、私の食事は18日後くらいに終わるだろう。
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