ピクシー③

「そもそもですね、あなたが散歩と指摘した外出は、外の精霊さんとコンタクトをとって、お話を聴いて、ヒトと精霊さんとが快く過ごせるための視察なのですよ」


 わたしが如何に仕事をしているかを、彼女に諭します。

 わたしの言いわけ染みた話を聞いた彼女は腕を組み頷き、呆れた口調で告げました。


「ええ、ええ、わかっているわよ。ヒトたちとお話をして、精霊たちとお話をして、困りごとを解決するのでしょう?」


 それはまったく想定のなかった、意外な答えでした。


「そんなことはわかっているわ。だからあなたが好きで、ずっと見ていたのじゃない」


 思い知らされました。

 彼女から受けていた期待を。信頼を。


 ピクシーは、働き者を好み、怠け者を懲らしめるといいます。

 なるほど、怠け者らしい行為をとってしまったわたしは、期待に沿えなかったわたしは、彼女に懲らしめられるべく懲らしめられたのでしょう。


 その反面、仕事机を掃除して、仕事の環境を整えてくれていたことは、彼女からわたしへの最大限の好意の表れだったのでしょう。

 わたしの仕事に期待をしてくれていた。

 応援してくれていた。

 同僚のいない、知り合いのまだまだ少ない集落、ぼっち相談所のわたしにとって、こんなにも心強いサポーターがいますか?


 いいえ。いませんでした。これまでは。


 ぼっちもいいものですよ、と他のかたにはたびたび口にしていました。

 けれど、身近な存在に信頼を寄せられてなお、それを口にすることは、もう、わたしにはできません。


 とてもシンプルな話です。


 わたしを見ていてくれた誰かがいたことが、そこに居てくれたそのことがシンプルに嬉しかったのです。


 そして、そんな彼女ピクシーに申し訳がたちませんでした。

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