ピクシー④

 これは全て、わたしの推測の話として聞いていただけると幸いです。


 彼女ピクシーは、幸せを得られないまま亡くなった子どもたちであるという本にあった説話がもしも、もしも本当ならば、大人という存在を知らず、けれど親という存在を認知していて、その大きな存在への憧れや期待に焦がれているのかもしれないと、わたしは考えました。


 そして、働き者である誰かに大人というものを感じて、ピクシーの本能として憧れと期待を寄せているのではないでしょうか、と。

 格好の悪い親の姿は、きっと誰だってあまり見ていたくはないですよね。

 ええ、わたしは嫌ですとも。

 きっと見ていられません。


 彼女の大人への執着ともとれる、あの質問攻め。

 執着というより呪いに近いのかもしれませんね。

 たとえば、決して大人という概念を理解し得ない、そう定められてしまったような。

 知りたいのに知ることを許されなくて、憧ればかりが膨らんでしまうような。

 その反動としての悪戯、面白おかしく過ごそうとする性格、なのではないでしょうか。


 そうしたとき、彼女から見た今のわたしは、見ていられない、情けのない大人という存在だったに違いないのです。


 ええ、これはわたしの推測です。


「大人さん、大人さん、なにを考え込んでいるのかしら」


 めぐる思考に割り込む彼女ピクシー


「黙り込んで考えて、それであなたの仕事が進むものならそれでいいのだわ。けれどそんなことは有りはしないのでしょう?」


 果たして彼女たちは本当に子どもの霊なのでしょうかと疑いたくなります。

 諭されているのは、わたしのほうですね。


 それはそれとして、ピクシーさん、もっとねぎらいの言葉をいただけるとわたしも頑張りやすいのですが、いかがでしょうか。

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