第3話 ギャンブラーは頂へ歩み出す。

「ザラナキ、勝負の話を決めて来たぞ。相手はカー・ユリーでルールはオープンベット。勝負は二週間後だ。出来る限り希望を叶えたがこれでいいだろう?」


 バーのカウンター席でウイスキーを啜るスキンヘッドの大男ザラナキの隣で、一人の男が静かに煙草をふかしていた。男の名はマシューでありザラナキと同じ組織の幹部の一人であった。筋骨隆々で見るからに腕っ節の強そうなザラナキとは違い、引き締まった体の上に黒のスーツのような物を着ている。


「すまないなマシュー。ただ出来る限り強い相手を当てたくてな」


「俺はその借金持ちを庇った男をこの目で見ていないから分からないのだが、なぜその男にそこまで拘るんだ?」


「別に拘ってはいない。あいつの正体を確かめたいだけさ」


 言いながらザラナキは先日出会った1人の男のことを思い出す。


「しかし、ユリーを当てるほどの人物なのか? ユリーと戦えるだけの力があるのならすでに名が知れている筈だと思うが」


「俺もそう思うが、あの男の雰囲気は明らかに異質だった。それに俺を前にして動じない胆力とカモを演じる演技力。あれは素人ではない。俺の勘がそう言ってんだ」


「お前がそこまで言うのなら素人では無いのだろうが、この目で見ない事には想像がつかないな」


「当日になれば分かるさ。おそらくあいつはユリーと互角の勝負をする」


「もし本当にユリーと戦えるなら見てみたい物だ。楽しみにしておくよ」


 煙草を灰皿に押し付けたマシューはそう言い残し席を立ったのであった。





 日は流れ二週間後。神束はエランの家から一時間ほど歩いた先、下町のような場所のさらに奥にある店の地下で、一人の女と机を挟んで対峙していた。


「あなたが今日の私の対戦者かしら」


「神束幽だよろしくな」


「私はカー・ユリーよ。お手柔らかにお願いね」


 黒のワンピースと肩上で切り揃えられた黒髪。そして真っ赤に光る爪が印象的なユリーは柔らかい笑みを神束に向ける。

 その様子を神束の後ろからエランは見ていたのであった。

 通称黒き秤。一糸乱れぬ冷静さとぶれる事の無い強い意思が特徴的であり、駆け引きなどは殆ど行わない。しかし、その揺るぎないプレイを目の前にして相手は勝手に疑心暗鬼に陥り、自滅して行ってしまうというスタイルを持った賭博師。

 少しでもギャンブルの世界に足を踏み入れた事のある人間ならば必ず耳にした事のある名前であり、そのユリーを前にしてエランは緊張していた。部屋に満ちるユリーの静かな圧に気圧されていたのである。

 唾を飲み神束に目を向ける。

 そして驚く。神束は椅子を傾け揺らしながら退屈そうに欠伸を漏らしていたのであった。神束のそれが余裕なのか単に素人だからなのかはエランには分からない。


「ところで、俺は結局いくら貸してもらえるの?」


 神束は首を傾げ、ユリーの斜め後ろに立っているザラナキを見た。ザラナキは部屋唯一の扉の前でマシューと話をしており、その横には護衛と思われる男も二人見える。

 神束の声にザラナキは振り向く。


「金硬貨500枚だ」


「500枚か……それでユリーは今いくら持ってんの?」


「……そうね、あなたに使えるのは1000枚ってところかしら」


「なるほどねぇ」


 呟き、神束は再び椅子を揺らす。

 神束が何を考えているのかエランは知らない。どうやってユリーに勝つのか、神束は教えてはくれなかったのであった。

 曰く、「手品の種は先に明かす物ではない」との事であったが、本当に種と呼ばれる物を持っているかすら分からない。

 エランは不安に包まれる。

 今エランの借金は微妙な位置にある。本来は神束に被せるつもりであったが、神束がギャンブルを申し込んだため彼自身にも借金がついてしまったのだ。神束がユリーに勝てば借金は消えるが、負けた場合は神束の借金にプラスされるかエランに帰ってくる事となる。

 そして、もし借金が帰ってくる事となれば、それは即取り立てされるだろうという考えが彼の不安を煽っているのだった。


「ねぇ、確かザラナキさんだっけ? もうあと1500枚貸してくれない?」


 神束が唐突に放った言葉に場が静まる。

 部屋にいた全員が神束を見て、その言葉の真意を確かめようとしていたのである。

 すでに勝負を仕掛けていると考えたザラナキは頭の中で言葉を選んだ。今回中立の立場から場を仕切るザラナキは下手な事を口には出来ない。もしその口にした言葉を使われ、ユリーの不利となった場合それは完全にザラナキの失態であり、付け入られる隙となる。中立としてそれだけは絶対に避けなければいけなかった。


「そこまでの金を持つ意味は無いだろう。貸すのは金硬貨500枚だ」


「そうか……それなら500枚で我慢しようか。それで勝負はいつ始めるんだ?」


「そう急くな。今から始める」


 神束があっさり納得した事に違和感を感じながらも、ザラナキは話を進める。


「今からカミタバ対ユリーの勝負を開始する。種目はオープンベット、下限一枚上限無しのルールで行う。質問は無いな?」


 言葉を聞き、ユリーと神束は頷く。


「それではまずオープンベットのルール確認をしておく。

 1から99までの数字が書かれたカードをシャッフルする。

 親、今回で言うと中立の俺が山札の一番上からカードを一枚引き、表向きにしてテーブルに置く。

 対戦者である二人は次に親が引く山札の一番上のカードの数字が、前に引いたカードの数字よりも小さいのか大きいのかを選び、金硬貨を賭ける。

 選択が合っていれば賭けた金硬貨は戻ってき、さらに賭けた金硬化の2倍の金硬化が親から支払われ、間違っていれば賭けた金硬貨とその2倍の金硬化が親に奪われる。10賭けた場合、負ければ30が失われ、勝てば30が手に入る。

 次の勝負は前の勝負で捲られたカードより高いか低いかの賭けとなる。つまり山札の上から次々にカードが捲られていくことになる。

 山札が無くなるか手持ちの金硬貨が無くなれば終了だ。

 そして今回は二人の賭博勝負と言う事で親である俺たちが背負った負債は獲得金額の少なかった方に負担してもらう事となる。

 このルールに異論は無いな?」


「異論は無いわ」


 ザラナキの言葉に先に返答したのはユリーであった。それを聞き、ザラナキは次に神束を見たが、神束は何かを考えるようにして天井を見ていた。


「何かあるかカミタバ」


 訝しむように神束を見ながらザラナキは声を掛ける。


「いや、ルールには何の異論も無いが、そのカードを確認させてくれないか?」


 神束はザラナキの持っているカードに目線を送った。


「これか? 良いぞ好きなだけ確認しろ」


 机の上に置かれたカードを手に取った神束は軽くカードを見回す。

 細工がないかの確認なのだろうがそれにしては雑な確認であり、エランには意図があまり読めず、やはり素人なのかと肩を落とした。


「ん。ありがと。それじゃあ始めてもらって大丈夫だ」


 神束からカードを受け取ったザラナキは二人を見回し、小さく息を吐く。


「よし、それでは始めるぞ。最初のカードはこれだ」


 ザラナキはシャッフルした山札を机の上に置き、一番上を捲って山札の前に出した。そこに書かれた数字は72であり、その部屋の視線がカードに集まった。


「最初の数字は72だ。次の数字が上か下か。ベットしろ」


 エランはカードを見て考える。このオープンベットの定石は数の多い方に賭けるというものであるが、カードはどんどん少なくなって行くため、勝負所は終盤、カードが少なくなってある程度何が残っているのかが分かった時である。

 もちろん確立の小さい方、今回で言う所の72よりも大きい数字、つまりは73から99が出る方に賭ける所謂博打打ちを行いリードを得ようとする戦略もあるが、基本的には終盤にどれだけ出たカードを覚えて安定択が取れるかが肝だ。

 初めの数字は72という事でまず間違いなく二人とも小さい方に賭けるだろう。問題はどれだけ賭けるかだ。多く賭けすぎ、万が一大きい方が正解だった場合大きなハンデを背負ってしまう事となる。だが、それを恐れて小さく賭け過ぎるとそれもまた大きなハンデとなってしまう可能性もある。

 普通では、相手の出方を見るという面でも話し合いにより探り合った上で10枚ほどの金硬貨を賭けるようになっている。この10枚というのは今目の前に居るユリーが元々始めた初手であり、オープンベットにおいてユリーが最強であったため広まった戦法だ。何があっても、相手が誰であっても、ユリーは必ず初めに10枚を賭ける。それは彼女が自分の中に持っているルールであり、彼女はそれに従って賭けを行うのだ。

 まず初めは何があっても10枚の金硬貨を勝率の高い方に賭ける。それにはどうやら勝ち負けを見ると言う意味があるようで、その結果でその日の流れを見極めているのでは無いかという噂もあった。勝てば賭ける金額を多めに設定し、負ければ賭ける金額を少なめに設定する。その後は勝率に応じて設定したベースとなる金額を変動させるのである。ギャンブルでは絶対に無視できない流れという物を考慮しながらも常に安定択を取り続ける合理的な戦い方でユリーは最強まで上り詰めたのであった。

 ユリーが戦っているのは確率であり目の前に居る対戦相手ではないのだ。

 期待値を追い求めるその戦い方は運が悪ければ負けてしまう事もあるが、圧倒的勝率を彼女は叩き出していた。

 そう言う意味でも黒の秤という二つ名はユリーにぴったりである。

 相手の器量を計る秤であり、確率の整合を計る秤であり、自らの運を計る秤でもあるのだ。そのユリー相手に神束はどう打って出るのか。

 エランは神束の行動に注視する。

 ユリーに関する情報は全て神束には伝えてあるため、初めは10枚を賭けるだろう。しかし、その後の行動はエランには全く予想がつかない。

 全員が卓に目を落とす中で、先に動いたのはユリーであった。


「私は下に10枚を賭けるわ」


 エランの予想通り、ユリーは10枚の金硬貨を椅子の横に置いてあった袋から取り出し、72より小さい方に賭ける。

 それを見て神束は大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出した。


「がっかりだなあ。俺の価値は金硬貨10枚か?」


 神束の言葉にユリーは反応するが、目線を向けるだけで言葉は発さない。


「金硬貨10枚。それで俺を量れるなら俺も苦労はしないんだけど」


 神束は先程ザラナキより渡された金硬貨500枚の入った袋を机に勢い良く置き、「上に500枚」と、言い放ったのであった。


 再び場が静まる。その真意を皆量りかねていたのである。


「俺の聞き間違えでなければ、500枚を上に賭けると言ったように聞こえたが」


「その通りだ。72より上の数字が出る方に金硬貨を500枚賭ける」


 ザラナキの窺うような声に対し神束ははっきりとそう言い放った。


「いや、ちょっと待って下さい!」


 割って入ったのは後ろで傍観していたエランであった。


「本当に何言ってるんですかカミタバ。このオープンベットの基本的な戦略とユリーの戦略は教えたじゃ無いですか。まずは10枚賭けるのがセオリーですよ」


「そんな事は知ってる。だがエラン、お前はそれでこの女に勝てたのか?」


「それは……無理でしたが」


「なら黙ってろ。これは俺のギャンブルだ。俺には俺のやり方がある。負けた奴は口出しすんじゃねぇよ」


 その時神束がエランに向けた目は、エランが今まで見た事も無いような物であった。鋭く相手を威圧しながらも、まるでこちらに興味が無いかのような冷めた目であり、エランは神束が急に怖くなった。 


「それで、500枚で本当に良いんだな?」


「あぁ、二言は無い」


 神束は向き直り、ザラナキに先を促す。


「……ではカードを捲るぞ」


 そしてザラナキはカードに手をかける。

 ゆっくりと捲られる山札の一番上のカードをエランは固唾を飲んで見守っていた。まさかこんな物が作戦だとはエランは思ってもみなかったのである。こんな戦法は聞いた事も見た事も無い。そもそも一回に500枚という大金を賭けるなどこのルールにおいてはご法度だ。最後の最後に大勝負をかける人間は存在する。しかし、それはあくまで負けを取り戻す為の博打打ちであり、まともな勝負ではない。オープンベットは堅実に行うギャンブルなのだ。それはユリーが証明している。もちろんユリーも自らの作戦を真似された場合の手段として50枚から100枚ほどの金硬貨を賭ける事もあると聞いた事はあるが、それでも100枚ほどが限度だ。賭ける金額が大きくなればなるほどリスクも大きくなり、たとえ当たる確率が高くても釣り合ってはいない。

 エラン自身も、過去に何度かこのルールで大きく賭けようとした事があった。しかし、賭ける事が出来なかったのである。70パーセントほどの当たる確率があったとしても外れてしまう確率がある以上はそれを怖がってしまうのだ。

 それこそがギャンブルであるのだが、だからこそ賭けられない。

 そのため、自らの財産と人生のかかった勝負を行える人間は、やはりどこかネジが吹き飛んでいるのだろう。そして目の前にいる神束もまたその部類の人間なのかとエランは思う。


「……これがギャンブルだ」


 神束がポツリとそう呟いた瞬間、カードが完全に捲られ勝敗が決まった。

 カードの数字は78であり、72よりも上。つまり勝ち取ったのは神束であった。


「……正解者はカミタバであり、賭け金は金硬貨500枚。カミタバにはその倍である金硬貨1000枚が支払われる」


 神束が正解した事実に言葉を失っていた場で、真っ先に声を発したのは親のザラナキであった。金硬貨500枚の入った袋を二つ奥から持ち出し、神束に渡す。そしてザラナキがコールした通り、神束はこの一戦で早くも1000枚の金硬貨を得て合計1500枚の金硬貨を持ったのであった。

 これぞまさにギャンブラーであるとザラナキは感じる。

 全てを賭けて全財産の倍以上の金硬貨を手に入れたその賭けは狂気であり、寒気を感じるほどであった。何よりも顔色を一切変えず賭けを行いきった事が異常である。もしも今回の賭けで負けてしまっていれば一気に1500枚の負債を負う事となり、神束の人生に自由は無くなる賭けであった。そんな賭けをするだけでも本来ならば異常だ。それなのにこの男は平然とした顔でやってのけたのである。

 もはや狂人だ。

 誰であっても、たとえ100パーセント勝てる賭けであっても、それだけの賭けをするには覚悟が必要であり、恐怖が伴う。

 冷や汗一つなく、顔色一つ変えず行えるような賭けでは無いのだ。

 一体神束にはこの勝負がどう見えていたのか。

 ザラナキを含めその場の全員が神束の見ている世界について行けていなかったのであった。


「次は下に1000枚だ」


 神束は再び机の上に金硬貨の入った袋を差し出す。


「……私は下に700枚賭けるわ」


 ユリーが何を思って700枚を賭けたのかは分からない。しかし、彼女がそれほどの枚数の金硬貨を賭けたなど聞いた事が無い。少なからず神束はユリーに影響を与えたのだ。

 そしてこうなってしまうとここからは殴り合いとなる。どちらが先に手を引くかのチキンレースであり、安定の選択が外れるタイミングで大きく賭けていた方の負けとなってしまうのだ。


「全く見ている方も心臓に悪い」


 ザラナキが小さく零した言葉は静かな室内に溶けて消えた。


「それでは次のカードを捲るぞ」


 二人は頷き、カードに視線が集まる。そして捲られたカードの数字は5であった。


「両者正解。ユリーは1400枚、カミタバは1000枚の金硬貨を得た。それによりユリーの勝ち金は2100枚、カミタバの勝ち金は3000枚となる」


 言いながらザラナキは小さく身震いした。

 誰がこのような展開を予想していたのだろうか。もし予想していたとすればそれは神束ただ一人であろう。この時点ですでに親側の負債は4390枚であり、勝負に負けた方はその全額を負債することとなる。ユリーの貯金総額を考えればそれは払う事の出来ない金額ではないが、痛手である事は間違いない。何よりも無名の男にそこまでの負けを背負わされたという事実は今後のギャンブル人生に影響を及ぼしてしまう。

 神束はユリーを自らと同じ場所に引きずり降ろしたのだ。


「上に3500枚」


 そして先に勝負をかけたのはユリーであった。ユリーにしては珍しく、らしくない早すぎる勝負の掛け方であったが、それほどまでにユリーは神束を強敵と認識していたのである。

 ユリーが示した数字は勝負をかけに行く物であった。神束が現在賭ける事の出来る最大の金額を賭けておく事でこれ以上差を開かせないようにするための一手であり、誰が見ても勝ちに行くための賭けであった。


「それが間違いだ」


 しかし、呟く神束だけは違う物が見えていた。


「ここで仕掛けなきゃいつ仕掛けるんだお前は。俺は下に3500枚賭けるぞ」


「……一体何を考えているんだ君は」


 試合中初めてユリーが口を開いた。神束の暴挙とも思える一手に疑問を漏らさずにはいられなかったのだ。


「それが分からないんじゃ俺の相手にはならないな。お前がやってるのはギャンブルじゃねーよ。……終わりだ。早くカードを捲ってくれ」


 神束は呆れたように首を傾げ、溜め息をつきながらユリーを見た。

 それはまるでおもちゃに飽きた子供の用であり、すでにこの勝負には興味が無いようであった。


「カードを捲るぞ」


 ザラナキはカードに手をかけ、そして捲った。

 現れた数字は4。つまりは5よりも下である。

 神束以外の全員息が詰まったように黙り、そして自然と視線が神束に集まった。


「終わりだ。帰ろうかエラン」


 立ち上がり、小さく伸びをした神束は机の上に置いてあった金硬貨500枚の入った袋を持ち上げ、エランの方へ向く。


「ザラナキさん。エランの借金と俺の借金は今の勝ち分から取って置いて下さい。残りの勝ち分である9000枚の内500枚は今持って帰りますから、持って帰れない分は後でエランの家へ届けて下さいお願いします」


 言い残し神束とエランはその場を後にした。

 静まり返った部屋でユリーは呆然とする。彼女にしてみれば神束が不正を働いたのではないかと疑いたい場面だ。しかし、このルールで不正を働くには親との協力が必要であり、自らを贔屓にしてくれているマシューの所属する組織が親を務める試合でそれは考えにくい。それにもし、ザラナキと組んで不正を行っていたとしてもユリーにそれを指摘できるだけの力は無いのだ。


「ユリー、負け額の半分はマシューが補うから安心しろ。俺たちもこんな事態になるとは予想していなかったものでな」


 うなだれるユリーに声をかけたのはザラナキであった。


「ユリーも負けた事を気にするな。お前はあくまで表の世界のギャンブラーだがあのカミタバは間違いなく裏の世界のギャンブラーだ。住む世界と求められている物が違う。それとマシュー。次の相手を用意しろ。もちろん次は裏のギャンブラーだ。上手く行けばカミタバは組織の切り札になり得るぞ」


「了解だ。あれなら裏でも十分通用するだろう」


 言われたマシューはその部屋を後にする。


「しかし、本当に良い才能だな」


 ザラナキは呟きながら4と書かれたカードの背を指でなぞった。そこにある僅かなへこみを確かめるようにして。

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