第62話
「言っとくけれど、まだ誰にも言ってないぞ。勿論、麗佳にも秘密にしている」
「……当然ですよ。言っていたら、先輩には性犯罪者になってもらっていたところです。いや、それどころか先輩にすら知られたくはなかったんですけれど……、女の子の知られたくない秘密を調べ上げるとか、先輩はスケベですね。死んでください」
「語尾についてくる罵倒が段々キツくなっていく……」
そのうち、洒落にならない罵詈雑言が飛んできそうで怖い。
「まあ、ともかくとして、理由くらいは聞かせてくれるんだろうな?」
俺のその言葉にしばらくの間、無言だった舞島だが、やがて観念したように息を吐く。
「……まあ、良いですよ。その代わりこの事は何があっても他言無用でお願いしますよ。……良いネタ掴んで先輩を思い通りにしちゃえると思ったのに、これで振り出しですよ」
「っつう事はお前の仲間になるって話は――――」
「ええ、解消で良いですよ。お互い秘密をさらけ出し合ってダメージ与えるよりは、お互いに秘密を守った方が平和的ですから」
「…………」
態度に出さないようにしつつも、ほっと一息。
「それにしても、随分と簡単に降参するんだな。ぶっちゃけて言ってしまえば秘密をお互いにさらけ出したとすれば、ダメージがデカいのは俺だと思うが」
敵視していると見せかけて裏ではファン、と性犯罪者となる証拠写真、どちらがよりダメージがあるかなんて比べるべくもないだろう。
対して舞島は小首を傾げつつ、言う。
「そんなことも無いんじゃないですか? 正直に言ってしまえば、わたしにとっては現在の地位を守る方が大事なんですよ。せっかく学園中でもそこそこ良い子で通っていて、適度にみんながわたしの事を好き。さらに言えばすこーし嫌いな先輩がいるって言っても、それすらも受け入れて、なおかつ肯定してくれる環境。これって結構心地良いんですよ?」
「そうだろうな」
つまり何をしたとしても、みんながそれを認めてくれる環境が周囲にある。
それはどれだけ気持ちいいのだろうか。
俺には想像する事すら烏滸がましいくらいだろう。
「あと先輩、ぶっちゃけわたしがこの写真を出したところで然程影響もないかも知れませんよ?」
「は? なんで?」
「いえ、だって……もう既にそのくらいの噂とか普通に流れてますし。先輩は盗撮も繰り返している変態のゴミ野郎だって」
「……知りたくなかったなー、それ」
そこまで俺の悪評って広がってたんだ……。もう病巣広がりきって、取り返しつかなくなってんじゃん。刻一刻とフォロワー伸び切っているし、まあそういう評価なんだろうなぁとは思ってたが、改めて言葉にされるとキツイものがある。
「まぁ、さすがに証拠写真を教員側に握られれば何かしらの処置はあるでしょうけれど……、わたしもそれほど鬼じゃないですよ」
「舞島……」
「ちょーっとSNSに挙げて一頻り話の種にしたあと、ちょこーっと影響力のありそうな話題の場所にぶちこんで後は好き放題オモチャになってもらうだけですよ」
「それ下手したら教師に提出するより酷くない?」
いや、それって話題になりすぎたら結局教師にも伝わるから、オーバーキルレベルだろ。巣ごと焼き尽くす気満々じゃん。
「冗談ですよ。ほんと、先輩ってば気持ちの悪い反応しますよね、ふふ」
邪悪そうな笑みを浮かべる舞島に、震えが止まらない……。
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