第58話
「にぃ、女子と二人きりになったら結構イキってて、格好良かったの……。舞島さん相手にはちょっと斜に構えてる感じで、ニヒルっぽい態度取ってるのがノノ的には凄い良かったの。特にブラのサイズうんぬんでからかわれてる辺りが最高だったの」
「お前、俺を殺しに来てるんだな? そうなんだな?」
確かにそんな会話をした事は今も憶えてるさ!
どうしてあんな事言っちゃったのかなぁ!? あとになってこういう事を、しかも妹から再確認されるのって辛すぎない? まじでさぁ!!!
「乃雪はぼっちで社会性の欠片もないと豪語しているにぃが、実際にはリア充女子高生とそれなりにしっかり会話できているのを褒めてるし、尊敬してる。ただただ、それだけなの……」
「妹が少しでさえ攻撃の手を緩めてくれない……」
いや、俺だってくっそ緊張してたよ!? でも、どもったら馬鹿にされるだろうし、変に卑下しすぎても足元見られるだろうから、必死で取り繕ったんだよぉ!
その結果のあの斜に構えてニヒル気取った感じの立ち位置だったんだよ!! 分かってくれよ、マジでさぁ!!!!
「詩羽さんとの青春っぽい一コマは感動さえ憶えたの。詩羽さんとの缶コーヒーでの間接キッス辺りでは『ああ……もうにぃは違うセカイの人間になってしまった……』なんて哀愁を覚えたりもしたの……青春の化身だったの……」
「よーし、分かった。見とけよ、乃雪。俺は死んでやるからな!? 今すぐ包丁で首をかき切って――――あれ?」
台所の引き出しから包丁を取り出そうとするも、そこには包丁はなかった。
「こんな事もあろうかと、すり替えておいたの」
「やっぱり確信犯じゃねぇか」
明らかにこちらを攻撃してきている乃雪の悪意を感じる。
「さて、弄りはこのくらいにして……」
などと言う乃雪への殺意は収まらなかったが、ひとまず次の話を聞こう。それから殺しても遅くはないだろう。
「あんなに面白い会話を聞けたからには乃雪も、対価としてそれなりに頑張らないと殺されるかと思ったの、にぃによって」
「おう、それなりの成果がないと控えめに言ってぶっ殺す」
正直昨日の話し合いで何の成果も出せなかった俺が言うのもなんだが……、いや、正直俺の払った対価的にはそれなりにぶっ殺しても良いんじゃないかな。
「それで舞島さんについてまず分かったのだが、確かに舞島さんは詩羽さんと同じオーディションに参加していて、さらには最終オーディションまで進んでいた。そのオーディションで選出されて、一躍人気を勝ち取ったのが詩羽さんだった」
「…………ッ、すげぇ、すげぇ良い情報なのに素直に妹を褒められない俺がいる」
「良いんだよ、にぃ。いつだって兄は妹を褒めたって良いんだよ?」
「畜生、お前はもう少し悪びれろや! あと、よくやった! すげぇ!」
一晩で得た成果としては本当に凄いんだけど、どうしてこう素直に褒めきる事のできない状況を作っちゃうかなぁ、この有能ポンコツ妹はよぉ!!
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