第40話

「この人、高校一年生で私と同じクラスみたい。クラスメイトだったの」




「……もしも登校したら仲良くしてくれると良いな」


 まあ高校に上がってから一ヶ月近くになるが、乃雪は一度として登校できていない。知らなくても無理からぬ話だった。




 正直、うちの高校がエスカレーター式でなかったら、進学は不可能であっただろう。つうより普通は不可能だったところを、自宅学習や課題の提出でなんとか進学させてもらった形だ。肝心の課題は一部俺が手伝った訳だが……、まあ今は仕方ないだろう。


 


 それはさておき。乃雪の集めてきた情報には顔写真に名字や名前、誕生日に身長、体重などのパーソナルな情報は勿論、学業などの学校での成績一覧、周囲からの評判、生い立ちなど過去に至るまで細部に渡って記載されていた。




 ちなみに俺は女子更衣室での会話は聞いていたものの、顔は見ていなかった。


 プロジェクターに映っている舞島は栗毛色の髪をポニーテールに纏めたいかにもリア充だと言わんばかりの派手な外見をしていた。目鼻筋が通っており、ハーフなのだろうか容姿が日本人離れしている。ほんのりと化粧をしており、それが似合っていて、彼女の派手な外見をさらに引き立たせていた。




 耳にはピアスが付けられていて、胸元が若干開いている。そこから高校生離れした大きな胸の谷間が見えていた。おっぱいが暴力的過ぎる。これでダンス部だとすれば、それは想像しただけで人気が出るのも頷けた。




 ……そりゃフォロワー高いよ、こいつ。




「す、すごいわねぇ……、これ」


 俺が彼女の一部に視線をとらわれがちな中、麗佳は乃雪の集めた膨大な情報を前に舌を巻いていた。


 わずか一時間近くでよくもまあここまでの情報を纏められたものだ。我が妹ながら驚くべき優秀さである。




 俺はどうにか彼女の写真の一部から目を離しつつ、全体の情報の精査に移る。




 舞島は派手な外見であるばかりでなく、成績も優秀で教師受けも良く、基本的に年上に対しては礼儀正しいようだ。中でも部活での成績、周囲からの評価が飛び抜けて良い。




 中学の頃もダンス部に所属しており、個人の部では全国区でも活躍しているほどで数々のイベントにも積極的に出場していたらしい。地元でのイベントにおいてはパフォーマーとして呼ばれる事も多く、何度かテレビでの出演も果たしているらしい。




 つまりは麗佳ほどでなくとも、世間においてそれなりの知名度もあるらしい。


 さらには周囲からの評価も良い。どうも小生意気で若干トゲのある性格である反面、誰にでも快活に喋り、幅広い人気があるらしい。




 それであの美貌だ。クラスメイトの男子は多少なりとも惚れてる。間違いない。だっておっぱい大きいし。




 成程、これなら麗佳に匹敵するのも納得だ。




 となると……ますます麗佳だけが舞島によって目の敵にされている事に大きな違和感を覚える。




 こりゃ、やっぱり何かあるな。




 そんな中、俺は情報その中の一つについて、俺は注目する。






「『中学校の間は劇団に所属。何度か舞台を経験しているほか、幾つかの番組オーディションも受けている』……か」




「あら、本当ね。舞島ちゃんもそういう時期があったんだ」




「もって事は……」




「ええ。私もオーディションを受けて、そこから芸能活動始めているから」


 と麗佳。




 もしやこれが原因なんじゃないか?




「麗佳。そのオーディションで舞島と会っているって事はないか?」




「ん――、その線は私も考えたんだけど……」




「だけど?」




「正直、緊張していたあんまりその時の事を憶えていないのよね」




「そうか……」


 舞島攻略において何かしらの手がかりになるかもと思ったが……、そう簡単にはいかないか。




「でも、私、オーディション会場で仲良くなった子とか、ましては喧嘩した子なんていなかったわよ。そんな余裕もなかったし」




「どうだろうなぁ」


 こいつにその気がなくとも、他の者にとっては違うなんて事はよくある事だ。




 それにこいつはオーディションに受かっている。それを舞島が受けて、そして落ちたとは限らないが……、その逆恨みって線はない話ではない。

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