第14話





「じゃあその辺のファミレスとかに入って作戦会議しようか。駅前まで行けば入れる場所いっぱいあるし」

 そんな風に当然かのような提案を見せる麗佳。



 やっぱりどうも俺という生き物が一緒にいる者に対してどういう影響を与えるか分かっていないらしい。



「一緒にファミレス行くとか、お前自殺行為だぞ。死ぬ気か?」


「ごめんなさいなんだけど、私ファミレス行こうって提案したのを自殺行為だと受け取られたの生まれて初めてなんだけど。頭混乱するんだけど」


「はぁ……」


「多分だけど絶対そんな溜息つかれる程、私悪くないと思う」

 そんな風に認識の甘い麗佳に俺は説明する。



「今回のバトルロイヤルは注目度――お前にとっては人気がそれに直結する」


「ん? それは分かってるけれど、だからと言って何でファミレス行くのが自殺行為なの?」


「いや、想像してみろよ。俺とお前が一緒に仲良く飯食ってる姿を、んでそれを学校の誰かに目撃されてみろ」


「んー、うん? ただただ、学校の友達とちょっとご飯食べに行ったくらいに思われるんじゃない?」


「違うそうじゃない。きっと周囲はこう思うはずだ。『うっわ、麗佳さんってばあんな糞キモ男と一緒にいる……そういう人だったんだ。マジ萎えるわ―』って」


「いや、そんな人いる!?」


「いるに決まってんだろ、そんなの。人ってのは付き合っている人間によって格が決められるものなんだよ。俺と喋っている時点でお前、最底辺の人間と格付けされる可能性あるぞ、ホント」


 本来ならこうして一緒に下校しているのも避けた方が良いはずだ。


 帰宅時間を考えれば学園の人間に見られる確率は低いし、この辺は人気が少ない。それに日が完全に落ちてるから、顔が確認されづらい。それに仲間としてある程度の事情説明は早急に必要だったから、こうして帰り際に一緒にいる。


 だが、仮に俺といる事を誰かに見られた場合、麗佳の『格』が下がってフォロワーの低下に繋がる恐れは十二分に考えられる。


 まあこいつクラスなら『えー、麗佳さん、あんなキモ男底辺ゴミ屑野郎とも一緒に居られるなんて……聖人クラスに良い人なのね。本当尊敬するわー』という感じで好評価に繋がる可能性もあるにはあるが……、まあリスクの割にリターンが少ないし、フォロワーの低下に繋がる確率は少しでも避けたい。



「そんな事ないと思うけどね」


「想像してみろ。例えるならアイドルがう〇こ棒で突っついているところを目撃されるのと同じ感覚だ」


「いや、自分を卑下し過ぎでしょ!」


 そんな事はない。これでも軽く考えている方だ。

 俺の周囲から受ける嫌悪度を考えれば、だが――――


「それじゃあ、どうするの? 今日は止めとく?」


「あー……それはそうと、麗佳は時間、大丈夫なのか? もう結構夜も遅いんだが……」


「うん。私は大丈夫。レコーディングで深夜になる事も多いから、こういう時間に帰るの珍しくないんだ」


 そういやこいつがガチの芸能活動してる奴ってのを忘れてた。だからと言って俺のような奴といるのを親が許すとは到底思えないが……、まあなんとでも誤魔化せるのか。




「なら――――そうだな。今から俺の家に来るってのはどうだ?」



 円城瓦太一。高校二年生にして初めて女の子―――-それもガチの美少女を我が家に誘った瞬間だった。

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