告げる、言葉

 誰もいなくなった教室に、二つの影。


 ひとつは、腰まで伸びた長い髪を変哲のない黒いゴムでくくった少女。

 規定のスカート丈に、何の改造も施していないリボン。

 この学校のリボンは紐なのかリボンなのかよくわからない幅な上に、てろんとした生地なので女子に不評だ。

 色も相まってタクアンリボンと呼ばれている。

 強い風に煽られて、クリーム色のカーテンが大きく膨らんだ。


「ごめんなさい」


 少女の髪と、スカートもまた風に吹かれて膨らむ。


 さらさらと。

 ふわふわと。


 少女はリボンに手を置いて、目の前の少年に改めて向き直った。


「私、あなたのこと―――」

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