風呂

2月だ、暖かい日がポツポツある。

店内に風呂があったら

と想像してしまった。もちろん店内と言っても水場があるあたりなんだけども

ここに風呂が作れるスペースがある。

だから想像してしまった。

風呂に入ってないスタッフがいるからだ。

週イチで入ればまだいいけど「おんな」なのに風呂にい入らない。

風呂に入ると疲れるからだそうだ。

 彼女は、10年前から雇っているスタッフだ。飛んでる女という感じではないけれど

タバコも吸うし、酒も好き、30台前半は風呂に入っていた。30台中頃から

風呂に入らなくなった。1Kのアパートに住んでると、風呂つきでも洗面所も一緒にあるから

汚れるのはわかる。彼女のアパートに行ったことはないが、風呂と洗面所をしきるカーテンのようなものは真っ黒だそうだ。床にはクソの色をしたカビが生えている。それに加え使わない家具も置いてあるのだから、たしかに風呂に入れない。便所も一緒の場所にあるわけだから。

トイレをするときはスリッパを履くらしいので、なんなら風呂に入るときもスリッパ履けばいいのにとも思った。とにかく彼女は風呂に入らない。

別にいい。彼女の人格にもまったく関係ないと周りは言い切ってるし元気もいい。だからあえて否定は出来ない。一人暮らしだとそんなもんだと、僕も思う。

 僕が想像で作った風呂のスペースのアイディア・・・きっと彼女は喜ぶだろうな

僕は自分がお店の中にある間仕切りもない風呂に入ってるところと、出たあとの想像をした。

営業中なら、お客さんは相当びっくりするだろうな。僕が裸なわけだし、風呂に入ってる場面が

買い物の中に突如現れたらびっくりするさ。僕は裸だ。

 彼女は流石に間仕切りをするだろう。職場と家がごっちゃになってる彼女は、きっと喜ぶだろうと思った。僕は訊いてみた。

 彼女は僕の想像どおりだった。

「社長、すっごくうれしいです。お願いします。作ってください。」

僕は彼女の会社の社長で、彼女は社員だ。


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