Chapter01

Main Story[人売り]

プロローグ

 年齢は二十代を折り返したところ。肩に届かないぐらいの黒い髪に、赤い瞳。黒いズボンを履いていて、膝の少し上まである黒いジャケットを身に着けている。ジャケット下の黒いワイシャツは第一ボタンを開け、控えめな金の刺繍が入った黒いネクタイはかなり緩められていた。腰のベルトの右側には、柄から切っ先までが黒く塗られた刃渡り三十センチ弱の何とも言えない長さの両刃の直剣がぶら下がっている。ベルトの左側には数本の細長いU字型のコルク瓶。後ろには上に開くポーチが備えられていた。

 その男――ロウルは、椅子に座って先ほど持ってきた一枚の紙切れに視線を落としていた。目の前の机には、前払いとして投函された報酬金が雑に置かれている。

 紙切れに書かれていたのは三十ほどの名前と、彼らがいるであろう住所、そして送り主が把握している最大限の情報だった。

 砂糖を大量に入れた紅茶を飲み干すと、折り目に沿って畳んだ紙切れをジャケットの内ポケットに入れてから立ち上がった。

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