書き出しの結果&完成前と後

 前回は書き出しについて答えてくださり、ありがとうございました!

 五人の方に回答をいただきましたが、興味深い結果になりました。(1)~(5)の書き出し全てがコメントで選ばれたんです。

 答えが固まるかなと思っていたので驚きました。ちなみに個人的には、(2)と(4)が興味を引きやすい書き出しではないかと感じていました。

 結果をみると、好きな物語が人によって違うように、書き出しもやはり人によって好みが異なる、ということがわかります。

 また、皆さんのコメントから、情景が浮かびやすいもの、物語や登場人物の状況・心情がより伝わってくるもの、といった書き出しに興味がひかれやすいということがわかりました。特にやはり、物語が最初から動いていると感じる書き出しにひかれやすいようですね。

 有意義な結果を得られたと感じています。これからの執筆に、役立てていければいいですね。


 それはそうと、この五つの作品、探したら完成前の書き出しが全て見つかりました。せっかくなので、ついでに完成前と完成後の書き出しを一緒に置いてみます。



【1】

(完成前)

 あぁ、もう全てが嫌だった。

 雨がザーザーと強い音をたてて降っていて、一向に降りやみそうにない。


(完成稿)

 あぁもう、全てが嫌で仕方なかった。雨も、濡れるのも、この感情も、全てが。

 雨がザーザーと強い音をたてて昨晩から降り続いていて、一向に止みそうにない。


【2】

(完成前)

「お前、海斗って名前なのに泳げないのかよ」


 そう、言われたのは何時だったか。

 多分、小学校の頃、通っていたプール教室で同じ生徒に言われたのだろうが、その時から俺は泳ぐというのがあまり得意ではなかった。


(完成稿)

「お前、海斗って名前のくせに泳げないのかよ」


 そう、言われたのは何時だったか。確か、小学校の頃、通っていた水泳教室で同じ生徒に言われたはずだ。



【3】

(完成前)

 雨の音が、室内に鈍く響いている。カーテンが開けられたままの窓から時折雷光が入り、明かりが消された室内を何度も照らす。


(完成稿)

 絶え間ない雨の音が、室内に鈍く響いている。カーテンが開けられたままの窓から雷光が入り、明かりが消された室内を何度も照らす。


【4】

(完成前)

 この森には、人を食う悪い精霊がいる。森に入るのは死ぬのと同じ。

 それは、彼女が祖父から何度も聞かされてきた言葉だ。

 けれど、今少女がいるのは、まさに精霊がいる森、その真ん前だった。


(完成稿)

 その森には、人を食う精霊がいる。

 それは、彼女が祖父から何度も聞かされてきたことだ。

 けれど今、少女がいるのはまさに精霊がいる森、その真ん前だった。


【5】

(完成前)

 君はあの日、ここで夕日に縁取られながらピアノを弾いていた。

 合唱部の練習が終わった後、部員でもないくせに、音楽室のピアノは君に独占されていた。


(完成稿)

 君はあの日、ここで夕日に縁取られながらピアノを弾いていた。

 合唱部の活動が終わった後、音楽室のピアノは君に独占されていた。




 作者としては、完成前より良くするために書き出しを完成稿では変えているのですが、人によって感じ方がまた違うのでしょうね。

 もしかしたら、完成前の書き出しの方が良いと感じる方が多いのかもしれません。

 やればやるほど、執筆って奥深いなーと思います。

 こうして、完成前と後の書き出しを並べて見ることはあまりしないことかなと思うので、紹介してみました。私はこんな風に書き出しを考えながら書いている、という一例ですね。

 今回は、前回のまとめということでここまでです。前回の回答へのご協力、ありがとうございました。次は違う話題を話す予定です。


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