第60話 『オークションに出された亡国の姫』

今エリザベス王妃はメイドと次女に膝枕されて絶賛気絶中である。

老齢の男性執事さんが

「ユリアナ様ご心配をおかけ致しました。エリザベス王妃は極度の宝石マニアでございまして、余りにも綺麗な宝石を手に入れてしまうと歓喜が頂点に達して失神してしまわれるのです。

チャーリー様が国王になられる時に、エリザベス様も王妃となられティアラを渡された時に一度失神した時がございました。

まさかもうそんな事は無いと油断しておりましたが、も一度そのような場面に出会うとは思ってもみませんでした」


とほとほと困り果てた様子の老執事。

そんな執事さんにユリアナは

「ノーマン様お気になさらないで下さいませ。私もエリザベス王妃が極度の宝石マニアという事は知っておりましたが其処までとは思っても見ませんでした。


ダンジョンで良い宝石が手に入りましたので、キリスに贈り物にしたらどうかと提案されまして今回お持ちぢた次第です」


と低頭に頭を下げている。

ユリアナ、執事さんの事をノーマン様と呼んでいたから昔から知っているみたいだな。

そんなひと騒動もエリザベス王妃が気が付けば笑い話の種になり和気藹々とユリアナとチャーリー国王、エリザベス王妃、ノーマン執事で昔話に花が咲いている。

この10年は色々と合ったらしい・・・


そして待ちに待ったオークション

オークション会場の舞台の袖から壇上に男性が歩いて出てくる。

オークショニアーのドレイヴンさんだ。

そしてドレイヴンさんが壇上に立ち静かに話しだした。

「これから待ちに待ったオークションを開催させて頂きます。主催は私、オークショニアーのドレイヴンが担当させて頂きます。

今回はストレイア公爵家ユリアナ姫様が史上初のダンジョン攻略を達成されました。攻略されたダンジョンは『宝石のダンジョン』

その宝石のダンジョンよりユリアナ姫さまが持ち帰った未知の宝石や未知の宝石の武器が何品か出品されております。オークションの目玉としてオークションの最終に出品致しますので是非ご期待下さい」


と締め括りオークションは開始された。


「ではロットナンバー1番 ナターシャの涙 これはエメラルドとなります」

と言って会場に見えるように左右に移動させて見えるようにオークションに来た客達に見せている。


『エメラルドの大きさはどんぐり大しかし透明度は凄く良い』

あまり大きいいものではない


そして円筒形の吹き抜けの中央の空間には魔道具で映し出したであろうそのオークション商品の映像が表示された。


その瞬間


「お~~これは中々の物だな」

などと会場からこえが上がっている


「金貨1枚!!」


「金貨2枚!!」

・・・

「金貨5枚!!」

・・

どうもその後入札が無いよう。


「ビットはございませんか?」

とのオークショニアーのドレイヴンさんの声が会場に響く!!


何度かの確認の後

「ハンマー!!」


と言ってオークショニアーのドレイヴンさんはハンマーを叩いた。

「ロットナンバー1番 ナターシャの涙はパドルナンバー 8番のお客様が金貨5枚で落札されました」


そんな感じで


2番 ミスリルの長剣            金貨20枚

3番 豪華なドレス             金貨2枚

4番 高さ50センチ程の純銀の像      金貨10枚

・・・

50番 5カラットのダイヤモンドの指輪    金貨100枚

・・・

99番 オリハルコンの剣           

ここで

チャーリー国王が動き出したみたいだ

流石武器収集マニア!!

オークショニアーのドレイヴンさんがオリハルコンの剣を武器会場に見えるように翳してから

「これは亡国のドスロリア王国国王が持っていたとされる長剣でございます」

と前置きし

「では金貨10枚から始めさせて頂きます」

その声に


「金貨20枚!!」

「金貨30枚!!」

「金貨40枚!!」

「金貨50枚!!」

「金貨60枚!!」

「金貨70枚!!」

・・・

ドンドンと値段が釣り上がってゆく!!

チャーリー国王は・・・

今まで膝に置いていた左手を右肩に手を置いて人差し指と中指を立てている?

オークショニアーのドレイヴンさんが

「金貨200枚が出ました。金貨200枚!!ビットは有りませんか?」

と突然声を上げた。

ユリアナが小声でチャーリー国王を指さしながら

「アレがビットのサインね」

と教えてくれる。

そういえばユリアナもオークショニアーのドレイヴンさんと合図を決めてたな


そんな事をユリアナト話していると

「金貨300枚!!」


おお~まだ上がいた!!

オークショニアーのドレイヴンさんがまた

「金貨400枚が出ました!!他にビットは有りませんか?」

「金貨450枚!!」


おお~小幅にビッド!!

もうお金が底を尽きかけてるのか?

オークショニアーのドレイヴンさんがまた

「金貨500枚が出ました!!金貨500枚!!他にビットは有りませんか?」

何度かの確認の後

「ロットナンバー99番 オリハルコンの剣 はパドルナンバー1番のお客様が金貨500枚で落札されました」

という言葉でチャーリー国王は満面の笑顔で右肩に置いた左手を下ろして

「エリザベス落札したぞ!!」

と満面の笑顔でエリザベス王妃に話しかけているが・・・

当のエリザベス王妃はユリアナから渡されたネックレスとティアラを眺めて

「ふふふぅっ~うふふふふ~ひひひぃ~」

ともう宝石の夢中で全然聞いていないっぽい?

と思いきや

「お目当ての物が手に入れられてあなた良かったですね」

と一言一瞬笑顔で答えて・・

また宝石を見ながら


「うふふふふっ~」


と恐ろしいくらいに宝石に執着?

噂通りの狂気な位の宝石マニアみたい・・だな・・


オークショニアーのドレイヴンさんが

「では次が午前中最後のオークションになります。

ロットナンバー100番 亡国の姫です

旧ドスロリア王国 第一王女 14歳 処女です」

その言葉で舞台上に連れ出された少女は・・・


この世のものとは思われない程綺麗・・だった。

ただ・・彼女の瞳はもう人生を諦めて・・光を失ってしまっている。


奴隷としてどこの誰とも解らない奴に売られてしまう。

そして慰み物として扱われて一生を終わってしまう・・・

『悲しいな・・・』



「金貨50枚!!」

一気に金貨50枚が出てきた!!


「金貨100枚!!」


おお~倍の金額

オークション出された少女の目には・・・

『涙が滲んでいるよう・・』

耐えられねえ~~


俺は・・

「ユリアナあれを買ってくれ値段は上限なしだ」

とユリアナに聞こえるくらいの声でお願いする。

「解ったわ私のぬいぐるみ作ってくれたお礼ね」

とユリアナがオレにウィンクしてくれて、帽子をかぶって人差し指を一つ立ててその立てた人差し指を帽子の上にゆっくりと上げてゆく。


その瞬間、オークショニアーのドレイヴンさんが

「金貨1000枚!!金貨1000枚が出ました。他にビットは有りませんか?」

と言うと即時に

「金貨2000枚!!」

「金貨3000枚!!」


するとユリアナは下ろしていた手を再度人差し指を一つ立ててその立てた人差し指を帽子の上にゆっくりと上げてゆく。

オークショニアーのドレイヴンさんがそれを見て

「金貨1万枚!!金貨1万枚が出ました!!他には有りませんか?」

会場を見回しながら声をかける。


会場を見ると

腹の出た貴族らしいでっぷりと太った男が握りこぶしを作って震えているよう・・・

あいつが粘っているみたいだな。


もう一人やせ型の紳士だろう男も何かビットしてるようだな。


「金貨2万枚!!」

あのデブの貴族が頑張っているか・・

まだ余裕みたいだな


あのやせ型の紳士は?

もう諦め気分?

じゃあのデブ男との一騎打ちか・・


俺は

「ユリアナ金貨5万枚に金額を上げてくれ。それで勝負が着くだろう」

とユリアナに小声でお願いすると

「キリス~~貴方って素敵~~」

と言ってぎょっと抱き締めてくる

「死ぬ~~!!」

「あらごめんなさいね」

と言いながら帽子の前で指を5本立てるユリアナ

オークショニアーのドレイヴンさんがそれを見て

「金貨5万枚!!金貨5万枚が出ました!!他には有りませんか?」

会場を見回しながら声をかける。


デブ男は?

握り拳をギュッと握って自分の太ももに打ち付けた後、頭を垂れた。

勝負あったって感じだな。


オークショニアーのドレイヴンさんが再度

「金貨5万枚!!他にビットはありませんか?」


「ハンマー!!」

と言いながら木槌を打った。

「ロットナンバー100番 亡国の姫は582番のパドルナンバーの方が金貨5万枚で落札致しました。

これで午前の部は終わりです。

2時間後の13時から午後の部を始めます。ストレイア公爵家の『宝石のダンジョン』の物凄いお宝が出品されますのでご期待下さいませ。

お食事に行かれる方はお忘れ物のないようにご退出下さいませ。ここでお食事される方はそのままお食事されても構いません」


という声で食事に外出する人達は一斉に動き出した。

俺は・・

「ユリアナ先に会計を済ませて、あの子を先に屋敷に返したい。多分競っていた貴族のデブ男が帰りがけに何かを仕掛けてきそうなんだ」

とユリアナにお願いしてオークショニアーのドレイヴンさんの所に連れて行ってもらい事情を説明し先に金貨5万枚を出して会計を済ます。


会議室で異空間収納から金貨100万枚の宝箱を出して金貨100枚づつ500組の高さに魔法で積み重ねた時にはオークショニアーのドレイヴンさん口をあんぐりとあけたまま驚かれた。


そしてホテルの会議室で亡国の姫と対面

連れてこられた少女はユリアナと俺をみて驚いたようだ。

ユリアナがそれを見て

「あら驚いちゃったかしら?買われたのが男だと思っちゃったかしら?まあ買ったのは男には違いないわ。貴方を買ったのはここに居るキリスだもの」

と言った途端に


「え?」

っと驚きの声を出した瞬間口を押さえてしまってた少女

俺は

「俺の気まぐれで買ったんだ。お前の希望は聞くぞ。行きたい所が有ったら言ってくれ俺は奴隷として登録するつもりはないから、好きな所に行って良いぞ。俺はストレイア公爵家2男のキリス、そして俺を抱いているのが母親のユリアナだよろしくな。それと何て呼んだらいいのか解らないからお前の名前も教えてくれないか?」


と自己紹介だ。

少女はおどおどしながらも

「私の名前はエンジェルと申します。私は戦いに敗れた亡国の生き残り。もう何処にもいく所はありません。置いて頂けるなら何だって致しますのでお傍に置いて下さいませ」

と頭を下げてくる。

そして頭を上げると続けて

「本当にこのキリス様が私をお買いになられたのですか?」

と聞いてくる。

「本当よ。キリスが貴方を一目見た途端に貴方を買いたいって言ってきたのよ?この子が私にお願いなんて珍しいのよ?まだ生まれてから6日しかたって無いけどね。

あ~私の呼び方は『お母様』でも良いわよ?」


「それは・・・」

と少女はそう言いかけて途中で言葉を止める。

俺は

「買われたなんて思わなくて良いぞ!!絶対に俺の家族に俺に買われたなんて言うな!!俺の家族には盗賊に襲われて家族を殺されて一人になったとでも行っておけ。それで俺が侍女として雇ったという事にでもしろ良いなエンジェル?」


「はい承知しました」

とエンジェルはしぶしぶ承諾。


オークショニアーのドレイヴンさんにでは奴隷契約をと契約の魔法が使える魔道士をつれてこられたが、俺は断って奴隷の首輪を除けてもらい取り敢えず平民としておいてもらった。

ただオークショニアーのドレイヴンさんにエンジェルをオークションで買って所有者は俺という証明書はもしもの時の為に書いてもらった。


俺達はホテルの裏口から出て、待たせてあった馬車に乗り込んでから執事のネルソンさんにエンジェルに必要な物を街で買ってもらうようにお願いし、金貨100枚の入った革袋を渡す。


そして俺達が馬車から降りると執事のネルソンさんとエンジェルを乗せた馬車は街の中に消えてゆくのを見送った。


これであの貴族のデブ男がいくら探しても見つかる事は無いだろう!!


つづく・・・

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