第51話 『女の子はぬいぐるみが好き』

俺達を乗せた馬車は俺達の前に騎士乗った騎馬が5騎、そして俺達の馬車を挟んで5騎が後ろに着く。その中を3頭立ての馬車は結構な速度で街道を突き進んでゆく。

朝の8時にエストレイアの城を出発した俺達の馬車はエストレイアの街の北門を抜けて1時間ごとの休憩を挟みながらも旅人達の横を爽快に走り抜けてゆく。


馬車の窓の外は延々と続く穀倉地帯の風景、エストレイアから80キロを超えた辺りから森林地帯がひろがっていき低い山ではあるが山岳地帯にさしかかる。デザルス山を挟んで南北40キロが山岳地帯を含む森林地帯そして其処を抜けた辺りからが旧サドレイン公爵家が持っていた領地を貰った地域で小麦の穀倉地帯で森林と穀倉地帯が交互に40キロ近くつづく。

その向こうがアトリシア国王が納めるアトレシアの地があり王都のアトリシア城まで旧サドレイン公爵家の都サトレアを巻き込んだ人口2000万人の王都の街並みが王城まで40キロにも渡って続く。


ミシェルは早速に退屈してきたみたいで

「お母さま~お母さまはキリスが生まれてからキリスに掛かりっきりで私の事をかまってくれなくなりました。もう少し私とも遊んでくださいませ」

とお茶目にユリアナに甘えてくる。


確かに俺が生まれてからというものユリアナは何か理由をつけては俺に掛かりっきりだもんな。

こんな馬車の中で身動き出来ずにじっと座っているだけって言うのも正直辛い。

3歳のミシェルがそう言うのも無理は無いだろう。


ちなみに父親のダリウスと長男のエドワードは絶賛爆睡中である。

何も無い小麦畑が続く景色ばかり見ていて疲れたんだろう。


俺はそんなミシェルに

「何時も悪いなミシェル。俺ばかりがユリアナを取ってしまって」

と謝ると

驚いたように

「キリスはズルいです。そんな言い方されたら私何も言えなくなっちゃうじゃないですか」

と両頬をぷっくりと膨らませて怒るミシェルも結構可愛い。


いけないイケナイ!!思わずそんなミシェルに見惚れてしまってたぞ・・・

そんな可愛いミシェルの仕草を見て俺は思わず

「ミシェル良い物をやろう」

と言ってしまった・・

俺にそんな事を言われたミシェルは

「キリス?私に何くれるの?キリスはまだ赤ちゃんでしょ?私にくれるものなんてあるの?」

と不思議そうに俺に聞いてくる。

そうだよな~俺ってまだこんな赤ちゃんなんだもんな~

そりゃ~不思議に思うよな~


『精神年齢はもう15歳だからな身体と精神のギャップが辛い』


俺は異空間収納からあの50階層目のボス部屋で部屋全体から湧き出るように攻撃してきた宝石の槍を取りすと・・


ユリアナが早速

「それって・・あの部屋で出てきた槍よね・・大丈夫?」

と心配そうに俺に聞いてくる。

『50階層目のボス部屋でこれに攻撃されたんだから、心配するよな』

と思いながら

「球ちゃんが俺の中に居るくらいだから大丈夫じゃないか?」

と言ってみる・・

『俺も絶対に大丈夫とは言い切れない所が辛い』

「うんそうだよね」

とユリアナも・・少し不安ぽい?

それとも納得?


俺はそんなギャラリーを無視して、『宝石のダンジョン』の宝石モンスターの魔石を一個取り出してプログラムを刷り込んでゆく。


『魔石』は大気中のマナを取り込んで魔力に変換し溜め込むことが出来る物

だったらプログラムのような記述された物でも溜め込む事が出来るんじゃないか!!

『宝石のダンジョン』の30階層の安全地帯でそう思った訳だが・・

あの時は攻略を優先と魔力枯渇のユリアナの狂乱行動に俺もパニックになってたから試す余裕も時間も無かったんだ。


『魔石の中にプログラムを定着出来たっぽい!!』

その魔石に50階層で出た槍に魔力を流して槍の中に魔石を取り込んで形を変形させて次第に形を整えてある物の形に次第に近づいてゆく宝石の槍


『50階層目のボスのドラゴンがこうやってこの槍の素材を自分の体に吸収させて自分の体の欠損を回復してたんだ!!出来るハズ!!』


出来た物は!!

ほんのりピンク色に染まったキラキラと輝く宝石で出来た

『前世の世界にあった高さ50センチのぬいぐるみのキ○○ーちゃん』

我ながら良く出来たもんだ!!

宝石だけどな・・・


それをミシェルに渡すと大喜びでぬいぐるにを抱き締めて

「キリスありがとう」

と言って頭を撫でてくれてるんだが・・

何か小さな子供に頭を撫でられるのは変な気分だ・・


そんなミシェルの頭を

よしよしする物体が有った!!

その瞬間


「ええええええええええええええええええええええ~」


ミシェルの素っ頓狂な声が馬車の中に響いた。

ユリアナは頭を抱えて

「はぁ~」

っと大きなため息をつきながら

「キリスそれであの50階層の材料を使ったんだ。そのうちそれアーティファクトって言われるようになるわよ」

と呆れたように呟いてくるが・・・

何かミシェルを羨ましそうに見ているのは気のせいか?


「解った解ったからユリアナ!!そんな恨めしそうな顔すんなよ!!もう一つお前のも作ってやるから泣くなよ~」


「やった~~」

と言うことでもうひとつ


高さ1メートルのぬいぐるみのキ○○ーちゃんを作る事になってしまった俺。


その後馬車の中では

そのぬいぐるみ達に


『ふに~~』


『ふに~~』


っと親子揃ってほっぺたを引っ張られて

きゃっきゃ笑い合っている親子が居た。



つづく・・・

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