第4話子供っぽい少年 3

 今、悠馬様はコンビニのフランチャイズ店内の中にいます。

 私は部屋の上に張り付いて下を見下ろしました。

 悠馬様はガチガチに緊張しています。オーナーの人は2、3質問して、悠馬様はビクつきながら答えました。

 そしてオーナーさんは後日連絡をする、と言って悠馬様を放ちました。悠馬様はペコペコと頭を下げて、そのコンビニから出ました。




「畜生!」

 また、いつものファミレスで悠馬様は憤激を放ち続けました。

「あの、クソオーナー!人が下手に出れば偉そうな顔をしやがって!そんなにオーナーってやつは偉いのか!?人にあれこれ見下せるんですか!?チッ!忌々しいやつ!」

「彼の方は礼儀正しい人だったではありませんか。確かに探りをいれるような目つきをしたのは確かですが」

 

そう、念話で話したら、確かに彼の攻撃的な感情が私の方に向かいました。

 しかし、先ほどの彼の憤激が治ったと思ったいつものウェイトレス、小鳥遊さんがそっと水とメニューを持ってきました。

 その瞬間、彼の怒りの矛先は私ではなく彼女に急速転換しました。

「ちょっと!君!メニュー持ってくるの遅いんじゃないの?」

 小鳥遊さんは真っ青になって頭を下げました。

「すみません!すみません!」

「ちょっとさ、客が来たらすぐに出すのが普通でしょ、ふ・つ・う。ここの店やっぱたるんでんじゃない?客にこんなサービスができないんじゃあね」

 私は念話で言いました。


「悠馬様、悠馬様」

「あん?」

「それほどにしたらどうですか?あなたもいずれは彼女と同じく働く身。ここはお互い様で行きましょう」

 しかし、悠馬様は冷たく言い放ちました。

「うるせえよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 私は何を言おうか迷いましたが、そういう行為は大人がやることではない、とも言おうともしましたが、その言葉が最も彼をイラつかせるものだと考え引っ込めました。

 それから、悠馬様は小鳥遊様にくどくどと嫌味を言いまくりました。




「ああ〜あ、いい気分だったぜ。あの小鳥遊ってガキ、俺に言われまくってマジでビクついていたよな。人をいじめるのっていい気分だぜ」

「悠馬様」

 家に帰った後、バックをベッドに上に置き、また買ってきたコーラを悠馬様は飲み始めました。

「悠馬様」

「なんだよ?」

 邪険な目で私を見る悠馬様に私は臆せずに言いました。

「あの様な弱いものいじめはやめてください」

「ウッセー」

 悠馬様はそっぽを向きました。


「あんな弱いものをいじめて、人として恥ずかしくないのですか?」

 それにぷっ、と悠馬様は嘲笑しました。

「人として恥ずかしくない?誰も見てないからいいじゃんかよ。あそこにいたのはみんな他人だぜ?」

 私は回り込んで悠馬様の前に来ました。

「なんだよ?」

 少しだけ、悠馬様はたじろぎました。


「悠馬様。誰も見ていない。自分の仲間が見ていないからといって悪徳をしていいのでしょうか?」

「じゃあ、聞くけど、なんで大切な人がいないのに善行する意味あんの?善行なんてものは好きな人にアピールするぐらいにしかする意味ないじゃんか?それとも親切にすればあのウェイトレスが俺に懐くとでもいっているの?」


「悠馬様」

 私は語尾を強めて言いました。悠馬様は少したじろぎます。

「なんだよ」

 私はこれからいうことに後悔はありませんでした。しかし、神の法則が頭にかすめます。

 私は魔王です。そして、クリスチャンの間では魔王は倒されるべきものです。もし、悠馬様がかなりの意思で私の消滅を願うなら私は跡形もなくこの人間界から消滅されるでしょう。

 しかし、私にはそんなことは藁の足かせでしかありません。


「悠馬様。善行をしたからといって人が簡単に人に好意を持つことはありません。というか、人に好意を持たれるために良いことをするのは全く悪い考えです」

 それに悠馬様の怒りが爆発しました。

「じゃあなんで人に親切しないといけないんだよ!それじゃあ意味ないじゃないか!」

 その瞬間、私の体内が変調をきたしました。どうやらかなり私に対してお怒りのようですね。しかし、私は全く気に留めず言いました。


「それは、端的に言って善行は良いものです。人には何が良いことか少しはわかります」

「・・・・・・・・・・・・」

「先ほどのいじめ、誰が見ても悪いことですね」

 それに悠馬様はそっぽを向きました。

「そんなことねえよ。俺はさっきのいじめ楽しかったぜ」

 その時、体の変調が和らぎました。

 やはり、いつもこれはきついですね。感覚器官が変調をきたすというのは。この感覚がフェイクと知っても、やはり自分の感覚が変調をきたしたら自分がなくなるような絶望感が来ますね。


 しかし、やはり私には二の足を踏むつもりはありません。むしろ、二の足を大きく前に出しました。

「ならばどうでしょうか?悠馬様はいじめは楽しかったと言いましたが、自分がいじめられたら楽しいですか?」

 それに悠馬様は苦い顔をしました。

「初めて仕事に挑むものは誰だって初心者です。人の助力が必要になります。その時に悠馬様はいじめられたいですか?」

「・・・・・・・・・・・・・」


「悠馬様」

「うるせー」

 私の体に、変調はありません。どうやら、私はなんとか難局を乗り越えたようです。

「とにかく、俺はお前の考えを受け入れたわけじゃないからな!そこんとこしっかり覚えてろよ!」

「はい」

 今回は消えずに済んだようですね。相手があまりに性が悪いとここで消えることもザラではないんですか、今回は消えずにすみました。

 今回の出会いを感謝します。天主よ。アーメン。

 そして、私は人知れず十字を切ったのです。





























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