第22話 エモクロアTRPG『よるにつがえ』プレイレポ・弓
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『共鳴感情』 表/友情(関係) 裏/スリル(欲望) ルーツ/憧憬(理想)
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『共鳴感情』 表/逃避(欲望) 裏/友情(関係) ルーツ/自己顕示(欲望)
神事は中止となったのだが、
取りやめてしまった準備を再開するには人手が必要だったが、八乙女がクラスのグループLINEで呼びかけることで、すぐに人は集まった。あのやさしいビッチとか。ビッチって言うな。
集まった皆が準備に奔走している中、八乙女と女鹿は、弓神事と神楽の打ち合わせを行っていた。
そこに話しかけてくる老婆が一人。『ニコばあさん』と呼ばれている、ベンチに座っていつもニコニコと町を眺めているおばあさんだ。
「お前さんたちは正しい神事をやろうとしているんだねえ、感心感心。今の祭りはごちゃごちゃだ、あれじゃあ蛇神さまだって満足できやしないよ」
「なんだなんだ。何者だニコばあ」
「ここで女鹿くんが芸術判定に成功すると、ニコばあさんから正式な神楽を教えてもらえます」
「よし、パーカッション技能で成功!」
「そうなんですよ。本来ここで想定されてるのは歌唱技能や舞踏技能だったんですが、女鹿くんは和太鼓のパーカッション技能だったので……。ニコばあさんが正式な神楽として、超絶テクニックのパーカッションを見せてくれます」
「すげえニコばあ!? それどうやって拍取ってんの??? 聞いたことないような変拍子だ!!」
神事の練習中、もっとも女鹿の目が輝いたのはこの瞬間だったという。
更にニコばあは、伝統を知るものとして、とても重要な話をする。
「生贄って言われてる話も、本当は別に取って食うわけじゃない。蛇神様を身体に下ろして依り代として神様とひとつになって力を与えるだけなんだよ」
「えっそうなの」
「俺、図書館で見たよ! 生贄に……依り代となるものの姿には、田村丸と同じ涙ぼくろがあるんだよ。依り代って! お前なんじゃないか?」
「いや、八乙女は鏡とか見ないのか……? お前にもあるんだぞ涙ぼくろ……?」
「あれ!? じゃあ俺が依り代!?」
二日目にも堪能した茶番をもう一度リピートしつつ、話を整理する。
『蛇神の巫女』が見出した、神と共鳴できる子ども。それが
生贄として捧げられる存在だと伝承には残っているが、それは正しいものではなく、実際は神の依り代となるらしい。
依り代になったものがどうなるかは、まだ明らかにされていないが……。
昨日からずっと、生贄と神事と血筋の話で頭がいっぱいになってぐるぐるしていた女鹿。
八乙女が生贄になることはとりあえず避けられた。張り詰めていたものが緩み、「よかったぁ~……」と息を漏らしながらへたり込んだ。
やがて訪れる神事の時間。黄昏時の
地震が起き、地割れの間からは百足が這い出して、町の人達は公民館へと避難。
またもや神事は中止になってしまう……。そこにヤヒロが現れた。
ヤヒロの姿が見えるたった二人の存在である、八乙女と女鹿に別れを告げるため。
「神事は見れない、か……。残念だが、仕方がない。安心しろ、おまえたちは私が守るから。きっとアイツの毒で私は死ぬだろうが、でも道連れにはできる」
「いいや、神事はやるよヤヒロちゃん。俺の体を依り代に使ってくれ」
「……私に身体を明け渡せば、おまえがどうなるかわからない。戦いの中で、私の力に呑み込まれてしまうかもしれない。……それでも、本当にいいのか?」
「もちろん! いざとなったら田村丸が止めてくれるしな!」
「八乙女……そういうとこだぞ」
「女鹿くんは、八乙女くんが依り代になって体を明け渡してもいいですか?」
「八乙女がそうしたいって言うなら……いいよ。何かマズいことになったらそのときは、俺がこいつを助けるときだ。やっと助けられるときが、来たってことだ」
本来かなり悩むべきシーンなのだが、八乙女は弱ってる子を助けるときには即決で、女鹿は「それで何か問題が起きたら助けてやる」の気持ちしかないので、一瞬で話は決まった。
女鹿は鹿頭をかぶって、神楽を始める。
ヤヒロは大蛇の姿に戻って、大百足と戦う。
八乙女は神であるヤヒロに体を明け渡し、共鳴しながら弓をつがえる。
「ではラウンド進行です。蛇神の依り代となった八乙女くんは、射撃技能でミラクル以上の成功を出せば大百足に矢を当てられます。女鹿くんは神楽でそれを支援することができ、神楽の成功レベルが八乙女くんの命中ダイスに上乗せされます」
「ニコばあさんに教わったぶんのダイスボーナスも足していいんだよね。では、3D振って……よしトリプル成功」
「じゃあ八乙女もトリプル分の3D増やして……ミラクル成功! 一発で行った!」
千回撃とうが万本放とうが同じく新たな気持ちでつがえる、渾身の
あやまたず大百足の眉間にその矢が突き刺さり、悪神は姿を消した……。
きれいな流れを受けて
我々の
こうして地震が収まり、瘴気がなくなり、湧いていた百足たちもいなくなった。
だが鹿頭をかぶっている女鹿は視界が悪く、状況がよく見えない。被り物を外して山をじっくりと眺める。
避難した人たちが顔を出し始めたのがその時だった。「あれ、女鹿じゃね?」「え? さっきのすげえ太鼓叩いてたの、女鹿?」「
その頃、八乙女は心と体を通じてヤヒロと会話をしていた。
「ありがとう、おまえたちのおかげで無事に討伐できたぞ! よかった……。楽しかった」
「ヤヒロちゃん、今のうちに依り代の俺の体を使って、他の人と触れ合っていいよ」
「え?」
「町のみんなと遊びたいんでしょ? 今ならきっとそれができると思うから」
八乙女の優しさに戸惑うヤヒロ。
しかし、神と繋がり続けることは依り代にも負担となり、人から逸脱してしまうかもしれない……。
そうなれば、八乙女は女鹿のもとに戻れなくなるかもしれない。
ヤヒロは「だいじょうぶ! もうじゅうぶんだ!」と八乙女に告げ、少女の姿に舞い戻って、山へと駆けていく。
「またねー!」と大きな声で見送る八乙女。
女鹿も声をかけようとしたが、八乙女のように大きな声を出すのに慣れていない。
そっと鹿頭をかぶって再び太鼓を打ち鳴らし、神に神楽を奉納することで、自分らしい手向けとした。
二人にしか見えない少女の後ろ姿、町に鳴り響く太鼓の音。
――祭りのあと。
翌日の学校では、とんでもない遠距離射撃を行った八乙女の弓神事と、「あの太鼓って女鹿がやってたの?」「そうだよ最後にもう一回お面かぶって叩いてたじゃん」「絶対女鹿だわ」の話題で持ちきりだった。
八乙女が話題になるのはこの町内ではいつものことだったが、女鹿に注目が集まるのはレアだったので、落差で女鹿ブームがすごい。
「あれさ~、メカ丸がやってたんだって? すごいじゃ~ん」
「あっ……がっ……! そっ……!」
「やさしいギャルが声かけてくれてるのに全然しゃべれてない田村丸」
「急にビッチとかが絡んできてこわい……」
「クラスメートをビッチって言うなって!」
面倒なので、八乙女を誘って取り巻きから逃げる女鹿。
「二人でしっぽりしたい」って言ったら
ほら、ヤヒロちゃんがずっと一緒にいたから……? ようやく二人っきりになれると思ってさ……?
「今日は学校で話しかけられてばかりで嫌だ……」
「だって田村丸はすげーんだからしょうがないだろ? やっとみんなもわかってくれたってことだよ! お前のその涙ぼくろは嬉し泣きのための印だもの!」
「ほんと八乙女はさ……そういうとこだよ……」
「何が?」
「お前を助ける側に俺が回るのは、難しいなって話」
話しながら二人は、あの寂れた神社に向かっていた。
この間は片手間の掃除だったが、今度はきちんと掃除をするために。
「もっとこの神社を大事にするように、父さんに言っておくよ。あと、神事の正しい伝承は、うちの家で守っていかないとな……。あのパーカッションを途絶えさせるのはもったいない……!」
「そしたらさ。ヤヒロちゃん、また会えるかな?」
「わかんないけど……。俺たちにしか見えないなら、もう気遣いはいらないな……」
小さなお社に、青のりを山盛りにしたタコ焼きをお供えしておく。
するとそこには、射的でとったブローチがいつの間にか祀られていた。
《追記》
エモクロアTRPG
https://emoklore.dicetous.com/
公式シナリオ一覧(『よるにつがえ』もこちらから無料ダウンロード可能)
https://emoklore.dicetous.com/download/
エモクロアTRPG | よるにつがえ❶ 【西園チグサ & 周央サンゴ】
https://www.youtube.com/watch?v=rHgboqxLxGo
以上、堪能させていただきました。
では皆様、良いセッションを。
《追記2》
以下、プレイレポに入れるところがなかったNGシーン。
俺「女鹿と顔を合わせた途端に……表情が曇った……?」
俺「今気づいた! さすがヤヒロは神様だけあって、画像にマウスをかぶせると輪郭がうっすら光るぞ?」
俺「そうなの!? あっほんとだ俺も光るってことは神様かなにかなのでは……?」
皆様、良いセッションを。
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