第21話 エモクロアTRPG『よるにつがえ』プレイレポ・破
余談ながら、
さらに余談ながら、キャラ作成前に「BL路線はナシで」と言っておいたのでがんばってつがわないように気をつけていた次第なのだが、俺とシナリオ作成者のダバさんと、追加上乗せで『よるにつがえ』イラスト担当者の方までお腐りになられているようだったので、その波動は実に強く、セッション開始前からがんばってあらがっていた。
「つがわねえように……つがわねえようにしないと……」
「現代怪異ものシナリオって前提で聞くと、『(気が)ちがわねえようにしないと』って繰り返してる東北訛りの人っぽく聞こえなくもない」
「俺の岩手出身のキャラ設定、そこで活きてくる!? 伏線回収!」
「なんの話してんの君らwwwwww」
つがわねえようにしないと……。
神事が中止になるらしいという噂は既に広まりつつあり、クラスメートのギャルが八乙女と女鹿に話しかけてくる。
「てゆーか? おまつりで弓撃ったり太鼓叩いたりしてるの毎年やってるけど、あれなんかマズイ系なん? 中止にしないといけない理由知ってる?」
「ひっ、ビッチ……! 行け八乙女」
「クラスメートをビッチって言うな」
ビッチの言うことももっともで(ビッチって言うな)、詳しい伝統は八乙女も女鹿もよく知らない。
そこで二人は情報収集を始めることになる。
女鹿は親やそのつながりから伝承について詳しい人を探り、事情通技能で判定。
八乙女は地元の図書館で「この資料に載ってたらいいな!」と直感技能で判定。本の山から適当に該当資料見つけ出す直感すげえな。表紙買いマイスターかよ。
どっちも成功したので情報がもりもり出てきた。
巫女により見出された子が出ると、土地神に生贄にするのが習わしだったこと。
土地神は生贄を喰って力をつけ、山の向こうから来た悪神を倒したこと。
ここまで聞いて女鹿は一瞬、「ヤヒロが『蛇神の巫女』でそれにもっとも共鳴している俺(この時点で共鳴レベルは3だった)が生贄なのか? まあいいか……。俺が犠牲になって八乙女たちが救われるなら……」と考えた。
しかしよく文章を読み直してみると、これは……違う!
女鹿こそが『蛇神の巫女』で、陽キャ嫌いの女鹿がなぜか惹かれているただ一人の相手である八乙女こそが、生贄なんだ!
性別を問わず『蛇神の巫女』の一族は巫女となるという。そうか、苗字の女鹿も『巫女』と『鹿踊』を両方兼ねていて……? 伏線回収……?(偶然です)
俺があいつに惹かれていたのは、生贄にしたかっただけなのか……? ただの血筋と伝承の問題……?
八乙女を生贄に捧げればすべて丸く収まる……?
さまざまな気持ちが渦巻く女鹿。
一方で八乙女は、過去の生贄の似姿に自分の面影を見つけ出す。
「生贄の顔に共通項を見つけたぞ! 涙ぼくろが……ある!」
「おい八乙女、ややこしい情報を見つけるな」
「この涙ぼくろ! つまり田村丸が生贄なのでは? たむらまるがあぶない!!!」
「おい八乙女、その勘違いのくだり終わったから。お前が涙ぼくろ設定かぶせてきたせいでややこしいことになってるだろ! お前そういうとこだぞ?」
自分たちのキャラ設定から無駄な伏線回収を繰り返しながら、二人は祭り会場で合流し、情報をまとめる。
と、そこにヤヒロが姿を現した。
八乙女と女鹿の二人にしか見えず話すこともできない存在のヤヒロ。それがバレたことで拒絶されるのではないかと思い、昨日は逃げてしまったと、ヤヒロは語った。
目線を落としてヤヒロに「そんなことないよ」と歩み寄る八乙女。人ではない存在にも、人に対しても、同じくまっすぐ向き合う男の子だ。
こういうときは八乙女に話し相手を任せるのが常の女鹿なのだが、意を決してアゴにかけていたマスクを外し、ヤヒロと八乙女の話に混ざる。
再び三名が打ち解け始めたころ、ヤヒロは「花火がよく見える誰も知らない場所がある」と、八乙女と女鹿を案内してくれる。
そこは山のふもとの神社跡地だった。
上がる花火。山をぐるりと巻くトカゲの陰影が、花火で映し出される。
ヤヒロは言う。「お前たちのやる、あの儀式を見ると元気が出るから、山から下りてきたんだ。話せるニンゲンがそばにいてすごく楽しい。明日の神事も見に行っていいか?」と。
八乙女は快く受け入れる。
女鹿はそれに同調しつつも、「でも……生贄……。俺が選んだ、八乙女が……? 生贄になっちゃうのか……?」とびくびくしていた。
「あとついでに俺、神事を受け継いでる家のものとしてこういう寂れた神社は無視できないから。女鹿はしゃべりながら、神社周りをきれいにしてるよ」
「俺も俺もー。田村丸と一緒にきれいにするー」
「この石灯籠……叩くといい音がしそうな気がする。しかしいくらなんでもスティックでカンカンやるのは罰当たりだ……!」
「バチで叩いてバチが当たるぞ田村丸。やめとけ」
ひとしきり神社を整えた後に、ヤヒロと明日会う約束をして、帰路につく。
するとそこに、「神事は正式に中止に決まった」との連絡が届いた。
「だってさ、どうする? 八乙女……」
「その『どうする?』っていうのは、どういう違法行為で
「ですよね~。お前には辞める選択肢はないか~。八乙女、そういうとこ……」
そう、どこでも飛んだり跳ねたり弓撃ったりで注目と怒られの的になっている八乙女は、中止になった神事を無理やり決行することなど平常運転なのだ。
ここでキャラクターシートを振り返ってみる。会話下手の陰キャとして制作された女鹿の能力値は、社会が2点しかない。
ところがコミュ力おばけの八乙女に至っては、社会が1点しかないのだった。こいつは人とかかわるのは得意だがルールを守る気はない。社会性がない!
われら社会性なきもの同士。しかして社会性で点数をつければ、女鹿のほうが上という事実……。俺がなんとかしないと……。
「ヤヒロのためにも神事はやりたい」「八乙女を生贄には捧げたくない」ふたつの思いの板挟みで悩む女鹿だったが、答えは出た。
「俺は八乙女が困っていたら助けてやりたいと思っていたんだ」という原点に立ち返り、神事の決行に力を貸すことに。
だが、即座に警察沙汰になるのは避けたい。八乙女は『パル
こうして女鹿は親の説得から入る。
「本来は病が蔓延した時こそやるべき神事なのでは? この程度の祭りがネットで叩かれることはないはず、杞憂なのでは?」今日調べた資料や伝承をもとにしつつ、女鹿が持つ事情通技能や検索技能を下地にネットに詳しいことを裏付けとし、ディベート技能で親を説き伏せる。
このディベート技能、「人と話すのが苦手な癖に議論として言い負かそうとすると強い」という嫌な性格設定のためにフレーバーで取っておいた技能なのだが、ここで活きてくるとは思わなかった。伏線回収!
判定も成功!
「お前がそこまで言うなら、父さんも協力してみるよ。神事の規模は小さくなるかもしれないけど」
「……うん、頼む」
「そうそう、お前の田村丸って名前はさ。鬼神退治の伝説が残る、坂上田村丸っていう人物からとったありがたい名前でな。田村丸の父は、人と大蛇の間に生まれた藤原俊仁という将軍で……」
親御さんも偶然のキャラ設定の伏線回収な話をしているけれど、無視して三日目に進みます。
《追記》
とうとう祭りも最終日。町に平和は訪れるのか。ヤヒロは元気になれるのか。
八乙女と女鹿はつがえるのか!? つがうほうを成功例みたいにするんじゃない。
次回、エモクロアTRPG『よるにつがえ』プレイレポ・
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