第21話哲学

家の中に、いる事に何故だか息が詰まりそうだった雫と狂は家という刑務所から抜け出して近所で母校である中学校に侵入した。


砂埃とねっとりした夏の夜風が雫の顔に張り付く。狂は、ここのグラウンドを田舎のオアシスと呼んだ。「矢島香織はどうしたんだよ?最近、放課後セックスしてないじゃん。」と雫は狂に聞いた。「もう飽きた。あいつ自身に飽きたと言うよりもあいつの体に飽きたと言った方が正しい理屈であり見解なのである。」最近、狂はシェイ○スピアやドス○エフスキー、プラ○ンと言った歴史的人物の書物を良く読んでいて、屁理屈という博学者になりつつある。戦下手な石田○成よりはマシだと雫は思っている。

狂は戦には強い。しかし、徳川○康のように気が長くないので本○寺の変を起こしてしまう明智○秀か前田慶○といった人物が前世かもしれない。気が短くてこの世を馬鹿にしながら楽しむ感じだ。


「人を殺したら罪と罰のように人間は狂人になってそして廃人になって正気に戻って新たな光のある未来への道を歩んで行く的な感じなんだろうかな?」と狂は雫に聞いた。「賢い人間は人なんて殺さないよ。」と雫は答えた。「素晴らしい見解だな。」狂の声が雫の脳に流れ込んで来て体に滲み出る。夜風が少し冷たくなって来て狂は寒い寒いを連発する。近くの自動販売機で缶珈琲を買って飲んだ。珈琲の甘味が雫と狂の脳に染み渡って行く。狂がいきなりグラウンドを走りたいと言うので意味もなく走った。サッカーゴールの前。プールの前。体育倉庫の前を横目で見つめながら走った。ベタついた空気は汗に変わり、雫の体を夜の闇へと誘う。「ランナーズハイになるのはセックスよりも気持ちいいぜ。」と狂は言った。「何で?」「セックスよりもアドレナリンが多く分泌されるからじゃね。」としれっとした調子で狂は答えた。

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