第9話SNS
哲を殴りつけて自宅謹慎処分を受けた雫は家のベッドの上で寝転がりながらスマホのあるアプリのコミュニティサイトにアクセスした。狂は馬鹿にしてきた。雫は無視して趣味の合いそうな人物を探して社会人を装ってビール好きの二十四歳のOLにメールを送った。「ビール好きなんですか?」という質問メールをした。
雫にとってビールは狂のようになれる自分に酔いしれる代物だった。初めて飲んだ時はあまりの不味さと苦さに引いたが酔うという世界の扉を開けてアルコールとはなんて素晴らしい物だと思った。理科の実験室でじっと待っているアルコールランプは哀れだとさえ思えた。素晴らしい世界に誘うビールに雫は酔狂している。
嫌な事や、眠れない夜があると父のビールを冷蔵庫からくすねたり帽子を被ってコンビニにビールを買いに行ったりしていた。日本酒はアルコールの度数が高すぎて飲んだ後にゲーゲー吐いた。狂は、その雫の姿を見てゲラゲラ笑っていた。
狂は、酒は嫌いで、女と暴力、イジメと煙草が好きらしい。たまに老け顔のゴレムをパシらせて煙草を買いに行かせている。自販機で買う時はゴレムは自分の父親の認証カードを使って法の目を掻い潜って煙草を買って来る。世の中便利になったのか不便になったのか分からないと狂は怒ってゴレムを蹴り飛ばしていた。
「ビール好きですよ。」という返信メールが来たのは雫がメールをしてから二、三日経過してからだった。「良かったら、今度、飲みに行きませんか?」と雫は思い切ってメールをしてみた。期待半分、冗談半分だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます